小学生男子"突撃お宅訪問"マンガ誕生秘話を聞く 話題の『お家、見せてもらっていいですか?』
全体にやさしいタッチながら、小学生が書いた間取図だったり、出されたお菓子だったりと細部は実にリアルで、「絶妙なありそう感」が魅力のひとつです。では、この物語、どのようにして誕生したのでしょうか? まずはその背景から伺ってみました。
「私が、ドキュメンタリー番組や映画が好きということ、散歩しながらお家を見たり、想像をふくらませるのが好きで。ごくごく普通の、一般の人こそ、話が進むうちに人間ドラマが垣間見えてきて、とてもおもしろいじゃないですか? いつか漫画として描けたらいいなと企画を温めていたんです。
今回、新しい漫画を描くにあたり、編集さんにやりたい題材はないですか? と聞かれ、案をいくつか出したのですが、編集さんが『お家探訪』のがいいですね、と話がまとまりました」と話します。
なるほど、佐久間さん自身が、「お家を見たい」「どんな人が住んでいるんだろう」と妄想するところからスタートしているんですね。お話は、家を見ていくことを通して主人公がじんわり成長しつつ、最後に大団円でまとまっていく、いわば王道の展開です。全体としては絵本のようなファンタジーさもありつつ、あたたかな読後感に包まれます。
キャラクターよりも「家が先」。シェアハウスは実体験
本書で登場する住まいはすべて一戸建てですが、そのバリエーションは実に豊富。日本家屋にツタの家、ミニマリストの家、ゴミ屋敷、アイドルの要塞、お城のような豪邸、増築しすぎなシェアハウス、小屋などが登場し、この10年の住まいのトレンドを網羅しています。
どのお家も絶妙に「見たい!」となるラインナップですが、取り上げるお家はどのようにして決めたのでしょうか?
「実はキャラクターよりも先に、取り上げる家を決めたんです。住んでいる町で散歩をしているなかで見つけた、豪邸、要塞のようなお家、ツタのある家など取り上げる家を先に決め、その後、どんな人が住んでいるんだろう、とキャラクターとして造形していきました。
そういう意味で家にすべてモデルがあるんです。ただ、実際に直撃取材できたらよかったんですが、リアルではなかなか難しく、作画も大変でした」
なるほど、家に説得力があるのはそういうワケなんですね。また、シェアハウスは、佐久間先生自身が若いころ暮らしていた経験などを織り込んでいるそう。
「高円寺(東京都杉並区)に住んでいた若いころ、とても個性的な人たちに囲まれていたんですね。実際にルームシェアをしていたこともありましたので、割と実体験に基づいています(笑)」