時計愛好家を「5大ブランド」が魅了し続ける訳 歴史と伝統に技術があわさった奥深き世界

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CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック
ブランドのアイコンとなった八角形のデザインをミドルケースに取り入れ、上下からラウンドケースで挟むことで美しい立体感を演出した「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック」。ダイヤルとストラップにライトブルー色を取り入れて、腕元を華やかに遊ぶ。自動巻き、18PGケース、ケース径38㎜。¥4,950,000(写真:オーデマ ピゲ)

激動の歴史から蘇ったドイツの名門「A.ランゲ&ゾーネ」

ここまで紹介した4ブランドとはまったく異なる歴史を歩んできたのが、ドイツのA.ランゲ&ゾーネだ。創業は1845年。ザクセン王国の宮廷時計師に学んだフェルディナント・アドルフ・ランゲは、1845年に首都ドレスデン近郊の街グラスヒュッテに弟子と共に移住し、時計産業を興した。

時計の規格を定め、制作するパーツを弟子たちの工房に割り振り、そのパーツを本社で組み立てるという、“街をひとつの工場に見立てる”製造プロセスによって高品質の時計を制作。大きなプレートでパーツをがっちり押さえる3/4プレートやテンプ受けの彫金など、機能性と美観の両面で個性を表現し、A.ランゲ&ゾーネとグラスヒュッテの時計産業の名声は、スイス高級時計に匹敵するほどだった。

A.ランゲ&ゾーネのマニュファクチュール
創業の地であるグラスヒュッテに、2015年に完成したA.ランゲ&ゾーネのマニュファクチュール。落成式には東ドイツ出身のメルケル首相(当時)も参列した(写真:A.ランゲ&ゾーネ)
ランゲ1
今年で30周年を迎えた「ランゲ1」。時刻表示をオフセンターに配置し、生じたスペースにアウトサイズデイトやパワーリザーブ表示、スモールセコンドを配置。表示を重ねないことで、すべての視認性を高めた理論的なデザインとなっている。手巻き、18KWGケース、ケース径38.5㎜。¥6,105,000(写真:A.ランゲ&ゾーネ)

しかし第2次世界大戦時に空爆を受けて社屋は崩壊し、冷戦時は東独政府によって国営化され、ブランドは休眠状態となってしまう。それは艱難辛苦の時代だったが、国営の時計企業として時計製造を継続していたことで、技術や伝統、ノウハウは守られた。そのため、東西ドイツの再統合を経て1990年にA.ランゲ&ゾーネは復興すると、1994年には復刻第1弾として「ランゲ1」など4モデルを発表。華々しく再出発を果たした。

A.ランゲ&ゾーネの時計は、徹底的な手仕事から生まれるクラシカルな味わいを大切にしており、ムーブメントには精密な仕上げを施している。そこから生まれる質実剛健な存在感は、スイス時計にはない魅力となっている。

5大時計ブランドは、どれもが歴史と伝統があり、時計は魅力的だ。もちろん、ほかにもすすばらしい歴史や文化を持つ時計ブランドは多数存在しているが、そういった知見を広げることで、奥深き時計の世界にどんどんハマってくのだ

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篠田 哲生 時計ジャーナリスト

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しのだ てつお / Tetsuo Shinoda

「ホット ドッグ プレス」編集部を経て独立。仕事の傍ら時計学校に通い、時計の仕組みや技術を学ぶ。時計専門誌やファッション誌、ビジネス誌、新聞、ウェブなど幅広い媒体で時計記事を執筆。スイスやドイツの時計工房などの取材経験も豊富。著書に『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)、『教養としての腕時計選び』(光文社文庫)がある。

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