時計愛好家を「5大ブランド」が魅了し続ける訳 歴史と伝統に技術があわさった奥深き世界
初代ブレゲは、自動巻き機構や耐震装置、高精度機構トゥールビヨン、ギヨシェ彫りやブレゲ数字など、現代も使用される多くの技術やデザインを考案した人物であり、フランスの時計師の中でもずば抜けた存在であった。
そしてフランス王家にその才能を高く評価され、王妃マリー・アントワネットのために美しい懐中時計を制作している。またフランス革命後は、皇帝ナポレオンの妹で後にナポリ王妃となるカロリーヌ・ミュラのためにブレスレット式の時計を制作。1812年に納めたこの時計が、世界初の腕時計とされる。さらにはフランス海軍御用達時計師としてマリンクロノメーターの開発を行うなど、さまざまな功績が残されている。
現在のブレゲは、製造拠点をスイスに構えているが、初代から数えて7代目となるエマニュエル・ブレゲが副社長を務めており、初代が残した技術や機構を継承している。
家族経営で時計文化を守る「パテック フィリップ」
パテック フィリップも、伝統の継承を強く意識している。1839年に創業した同社は、1851年にロンドンで開催された第1回万国博覧会にて金メダルを獲得し、さらに英国ヴィクトリア女王がペンダント・ウォッチを購入したことで、一気に王侯貴族の中で知られた存在となる。
数多くのすばらしい時計を作ってきたが、とくに有名なのがアメリカ人実業家のジェームズ・ウォード・パッカードとヘンリー・グレーブス・ジュニアが、競うようにパテック フィリップに依頼した複雑な懐中時計たち。中でもグレーブスが注文し、1932年に完成した超複雑タイムピース「グレーブス・ウォッチ」は、2014年に行われたサザビーズのオークションで、2323万7000スイスフラン(約28億円)で落札され、時計の最高落札価格を更新した。
こういった歴史の蓄積は、ジュネーブの名所である「パテック フィリップ・ミュージアム」にも表れる。ここにはジュネーブで制作された歴史的価値のある時計やパテック フィリップの過去の傑作などが収蔵されており、時計とそれをとりまく文化を楽しむことができる場所となっている。
また、こういった希少な収蔵品を展示するエキシビションも定期的に開催。昨年の《ウォッチアート・グランド・エキシビション(東京2023)》は、約6万人が入場した。美しく、複雑で、魅力的な時計を作り、その文化を守り、広く伝える。それこそが、パテック フィリップが最も尊ぶことなのだ。
こういった文化的活動ができるのは、同社がジュネーブ最後の独立した家族経営であることと無縁ではない。1932年に経営を受け継いだスターン家は、それから4代にわたって家族経営を続けており、揺るぎなき信念で、スイス時計のすばらしさを世界にとどけている。
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