娘の死から最期まで22年の日記に吐露された心情 「只生きている。死ねば完了」の境地に至るまで

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<3.27(金)pm8.55
 医者の仕事 完了!
 帰宅してお母さんとビールを。お母さんはTVをつけてマンガをよんでいました
 いろんな方が来ていろんな事×を話して××、
 万感胸がせまる(嬉しいのか悲しいのか×しいのか悪いか よく分かりません。
 でも必ずこういう時が決まる。誰にも!(別れ!)
 死ぬというのも別れでしょう
 偶然朝のFMでChopinの別れの曲が流れていました
 私には有難い一瞬でした。
 私を愛してくれた方々!!
 很感謝!!!(※)>
(※筆者注:中国語で「とても感謝している」という意味)

「生きてる限り 自然と生き物をみつめるぞ!!」

引退後もSさんの体調を気遣いながら、できるかぎり散歩して、碁を打つ暮らしを続け、日記もこまめにつけている。知人や親族の墓参りや命日の追悼は若い頃から欠かしていないことも過去の日記から伝わるが、2021年に入ると長めの感想が添えられることが多くなった感がある。

<1.11(月)pm8.00
 オヤジの命日!
 あの時、コタツにねたままいびきをかきて死んでしまった
 オヤジをよく覚えています。
 そのあとリヤカーで火葬場へきったのに×× 2Fからおーと見られて
 この日には××○○兄がTelをよこすので
 今だに不思議に思います。その兄も今はなし。>

88歳の誕生日を迎える直前には、若い頃からの友人の訃報が届いた。

<2.22月)pm8.10
 ○○涙 2.1(月)
 よく生きてくれました。
 満身創痍の若い頃から
 よく今迄、立派です。
 いろいろあって、今は何も浮かびませんが、
 なにしろ、素晴らしいつき合いをしてくれて
 很感謝!!
 でも淋しい! 一人、一人、俺より先に!!
 残った俺は! たった一人で下らないこの世をみつめる?
 いや俺は、生きてる限り 自然と生き物をみつめるぞ!!>

そして最後の28冊目に突入する。2021年7月、長男に車を出してもらい、夫婦で新型コロナのワクチン接種会場に赴いたことなどが淡々と記されている。

最後の日記はその2カ月後のものだった。数日分の出来事をまとめて書いた簡素なものだった。

<9.12(日)pm8.30
 お母さんの退院祝いということで 感謝
 (略)
 9.13(月)お母さんの足の傷 日ごとによくなっています。
 9.14(火)は一人でチューハイを呑みました。
 9.15(水)pm9.00 のみすぎてヒル近く迄ねてました一日ロクなことなし
 介護の書類もそのまま 明日に延期 夕 サンポ(略)>

 

2021年9月、最後の日記(筆者撮影)
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