遺伝子組み換えなくとも「十分な食糧ある」

作物の技術進歩、どう向き合うべきか

――食糧問題の解決に必要なのは最先端技術ではないと。

必要なのはローカル技術。グローバル技術ではない。ただ、先端技術が不要といっているわけではない。発想が逆だと指摘したい。現場のニーズを把握し、どういう技術を使ったら問題が解決されるのかを当事者を含めて話し合ったうえで、意思決定がなされるべき。参加型でボトムアップ型の技術開発の有効性は世界各地で確認されている。その過程で先端技術の一部が応用されることはあり得るだろうが、先に先端技術ありきの発想では、ローカルな問題に対応できない。

――農業生産者のメリットもない?

たとえば当初、除草剤耐性の遺伝子組み換え作物を育てると、いろいろな種類の除草剤を散布していたのを一つで済ませることができ、除草剤の使用量が減るという話だった。だがこの説はいま大きく裏切られている。ある意味当たり前で、同じ除草剤をまき続けていれば、耐性を持つ雑草が出てくるのは自然の摂理。アメリカでも南米でもいま大問題になっている。

モンサントの除草剤「ラウンドアップ」を、最初は1回まけばよかったのが、1.2、1.4回と増え2回になってきている。しかもほかの除草剤も組み合わせてまかないと、雑草が退治できなくなっている。たとえば枯葉剤にも使われていたような、かなり強力で毒性の強い除草剤も使わざるを得なくなっている。結局昔と変わらない、雑草と除草剤、害虫と殺虫剤のいたちごっこをやっているのではないか。

理論的には除草剤の使用量は減るのかもしれないが、遺伝子組み換え技術が使われている状況は、昔と同じ大規模で画一的な栽培体系。使い方が同じだったら、同じ問題が出てくるだろうことは、当初から懸念されていた。

殺虫には一定の効果

ただ、殺虫剤の削減効果というのは無視できないし、いまでも効果が漸減的ながら続いているようだ。それでもやはり、大規模で画一的な栽培を続けていれば、雑草と同じように害虫も耐性を持ってくる。そもそも、害虫は複雑な生態系の中に存在することを忘れてはいけない。無数の虫が微妙なバランスを保って植物や微生物を含む複雑な生態系を構成している。だから、年や地域、圃場によって、特定の害虫を標的とした害虫抵抗性品種が効果を発揮しないことは当然に起こりうる。

遺伝子組み換え品種によって収量が増加することはありうるが、それを遺伝子組み換え技術のおかげと主張するのは誤りだ。こうした特性は一つや二つの遺伝子を操作したら達成されるようなものではなく、複雑なメカニズムや作物の機能がいろいろかかわってくるから、現在の技術では十分に制御できていないのが実情だ。

もちろん、将来的には遺伝子操作によってこうした特性をもつ品種を効率的に作り出せるようになるかもしれない。だから、研究開発を続けることの意義は否定しない。

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