遺伝子組み換えなくとも「十分な食糧ある」 作物の技術進歩、どう向き合うべきか

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緑色のものは、遺伝子組み換えのトウモロコシ

種子や農薬の寡占も深刻な問題。遺伝子組み換えが9割を占めるような作物の種子の価格はかなり高くなってきている。遺伝子組み換えを推進する人たちは、多くの機能が加わり付加価値が高まっているのだから、価格が上がるのは当たり前だと言う。たしかに栽培の手間は省ける。これは大規模な生産者からすれば結構大きいメリット。それでも、種子の価格に見合った収益の増加につながっているかというと、最近はアメリカの農家のあいだで少しずつ疑問符がつき始めているようだ。

――遺伝子組み換え作物は日本ではほとんど商業用の栽培事例はない。だが家畜の餌や加工食品の原料として、大量に輸入していると推測されている。日本では、主な原材料(重さで上位3位以内、占める割合が5%以上)でないと表示義務はないし、しょうゆや油に関しても表示義務はない。こうした現在の制度に問題点はあるか。

どんどん認可されて遺伝子組み換え作物を使った食品が食卓にのぼってくる、これはもう避けられない。それでも、消費者には食を選ぶ権利があり、知る権利もある。

5%という水準は他国と比べて緩すぎるという問題もあるし、家畜の餌や油は、遺伝子組み換え表示の対象から外されている。知る権利はそういう意味では十分でない。輸入食材への依存度が高い外食でも表示の義務はない。経済学の発想からいえば、全部徹底して表示しようとしたらとてつもないコストがかかり、現実的ではないという話になる。けれど現実的でない事態に追い込んだのはこういう技術を導入した結果。本当に消費者にとってメリットがあるかどうか、ここでも考える必要がある。

技術の限界を伝えるべき

(遺伝子組み換え技術について)消費者の信頼や理解を勝ち取るためには、技術の限界をきちんと伝えるべきだと思う。それは安全性についても同じ。リスクはゼロというような話をするから反発される。こういうリスクの可能性があるけど、こう管理することによってリスクコントロールが可能と言えばいい。リスクを示唆するような研究があると、反発して全否定するのは、態度として非科学的だと思う。

ただし、私自身は技術者ではない。具体的なリスク論をここで議論するつもりはない。仮に、一部の研究が示唆するようなリスクがなかったとしても、すでに話をしてきたように、生態系的あるいは社会経済的な側面から評価をするかぎり、この技術を手放しで受け入れることは到底できない。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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