けんすう:要は人ってどんどん変わるものだから、いわば「過去の自分」と「現在の自分」は他人だし、「現在の自分」と「未来の自分」も他人なのだと。この視点が、僕の著書(『物語思考』)では完全に抜け落ちていて、『THINK FUTURE「未来」から逆算する生き方』を読んで一番ハッとしたところです。
40代まで生きてるなんて思わなかった
箕輪厚介(以下、箕輪):現在の自分と未来の自分は他人。だから、その他人を近しく感じることから始めないと、「なりたい自分」になるための行動がとれないってことですよね。
けんすう:そうなんですよ。よく「なりたい自分の姿を思い浮かべて、紙に書いてみよう」ということなら数多の自己啓発本で言われている。これの落とし穴は、自分でたしかに思い浮かべたはずの未来の自分が現実感なさすぎて、「書いておしまい。特になにも行動しない」になってしまうことです。だから、まず未来の自分を、現在の自分の我が事としてとらえることが必要になる。
現に、本書では「自分の老け顔を作成してくれるアプリ」を使って、現在の自分のアバターを見せられたグループと、老いた自分をシミュレーションしたアバターを見せられたグループとでは、後者のほうが老後資金を増やす行動を取ったという実験結果が紹介されています。未来の自分をリアルに感じることが、貯蓄という行動につながったということですね。
箕輪:それひとつで現在の行動が変わるっていうのが、おもしろいですよね。個人的には、40歳近くなって一番の変化が、将来のことを考えるようになったことなんです。20代のころは、別にロックスターぶっているわけではなく「今を生きればいいじゃん」と思ってたし、普通に40歳ぐらいで死ぬと思ってましたから。でも今は39歳、順当に中年を迎えてみると、このまま年を取っていくんだろうなっていうのが具体的に見えてきて、その矢先に読んだのが本書だったから、かなりリアルに感じられました。
けんすう:なるほどね。たしかに、20代にとって40代の自分なんて想像の範疇を超えているから、もうそのころには死んでるんだろうなとか思っちゃう。