石破氏の「アジア版NATO」構想はポエムに過ぎない ASEAN首脳会議で失笑買う恐れ
しかしながら現況の「格子状」の枠組みや、石破氏の言う「日米同盟を中核としたハブ・スポークス」と、加盟国すべてが集団的自衛権行使の義務を負うNATOや、そのアジア版との開きは大きいと言わざるをえない。
そもそも日本が呼びかけたところで話に乗るアジアの国があるのか、甚だ疑問だ。よしんばアメリカがオーストラリア、韓国、フィリピンといった同盟国やインド、シンガポール、タイといった「友人」に働きかけたとしても、同調する国は少ないだろう。
どこが加盟してくれるのか
本家NATOはロシアという仮想敵がはっきりしている。これに対してアジア版NATOの設立は「中国を西側諸国が抑止するため」と石破氏の寄稿は説明している。
ロシアと欧米との関係と違って、アジアのほとんどの国の貿易相手国のトップは中国だ。米中対立のなかで中国寄りを鮮明にする国がいくつもある。対立に巻き込まれたくないと考える国はそれ以上に多い。反中国で旗幟を鮮明にしているのは現在、南シナ海の領有権争いを抱えるフィリピンぐらいだ。
そのフィリピンとてドゥテルテ前政権当時は中国寄りの姿勢を示していた。政権が変われば、対中政策も変わりうる。「西側諸国が抑止するため」という論理展開には最初から「アジア」が欠落している。
石破氏が寄稿のなかで挙げたアジアの国はフィリピンとインド、韓国の3カ国に過ぎない。台湾有事や中国の脅威、ロシアと北朝鮮の結託などについては危機感を表明しているものの、南シナ海の紛争勃発の危険性やインドと中国の領土紛争については触れていない。
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