あの「加賀屋」と組んだ北陸観光列車の実力 金沢-和倉温泉間で「花嫁のれん」が出発進行
また、1号車の座席は丸棒を格子状に並べることで視界を遮り、個室のような雰囲気を出しているが、これも当初案では角材を用いるはずだった。
この棒は列車が揺れた際に乗客が握る手すりの役割も果たすが、角材では握りにくいということで、最終的に角が削られ丸棒となった。
1号車の壁面の一部は金沢金箔で装飾されている。金沢を代表する伝統工芸だが、「車両の内装に伝統のものを使うことはなかなかない」と、車内装飾の施工を担当した伝統産業メーカー・箔一の浅野達也社長は語る。「内装に使うには、光や摩擦などさまざまな問題がある。デザイナーと何度も打ち合わせをして、ようやく完成した」。
遊び心と安全性を両立させるギリギリの折衝の末、ようやく完成した車両について、井上氏は「思わず記念写真を撮りたくなるカメラスポットがたくさんあるでしょ」と胸を張る。
花嫁のれんは既存の車両を改造して製造された。同じく既存の2両編成の車両を改造したみすゞ潮彩の製造費用は8000万円だった。花嫁のれんの製造費用は非公表だが、みすゞ潮彩を上回っているのは確実だろう。
最大の売りは「極上のおもてなし」
花嫁のれんには、日本のどの鉄道会社もかなわない大きなセールスポイントがある。
北陸を代表する旅館といえば、花嫁のれんの終着駅・和倉温泉にある「加賀屋」があまりにも有名。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(旅行新聞新社主催)で1位を連続受賞し、日本を代表する温泉旅館でもある。その加賀屋が花嫁のれんのサービスを担っているのだ。
加賀屋の総料理長が監修した料理が車内で提供されるほか、加賀屋の客室係1名と加賀屋で研修を受けたJRグループ社員2名がアテンダントとして乗務し、車内でサービスを提供する。JR社員の接客は加賀屋の客室係と「区別がつかないレベル」(JR西日本)だという。
つまり、列車に乗りながら加賀屋の料理とサービスを楽しむことができるわけだ。「能登の優しさや温かさが伝わるような“おもてなし”をしたい」と、加賀屋の小田與之彦社長は意気込む。
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