あの「加賀屋」と組んだ北陸観光列車の実力 金沢-和倉温泉間で「花嫁のれん」が出発進行

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そもそも花嫁のれんとは、北陸地方で見られる、婚礼に用いる特別な暖簾(のれん)のことである。花嫁のれんは婚礼の当日、婚家の仏間の入り口にかけられ、花嫁はそれをくぐって仏壇の先祖にお参りをして、その後に結婚式に臨むという。そんな名前を授かった車両だけに、加賀屋の小田社長も完成した車両を前に「娘を嫁に出す気分」と感慨深げだ。

なぜディーゼル車を使ったのか

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「花嫁のれん」はキハ48の改造車(撮影:尾形文繁)

花嫁のれんに用いた車両は、ディーゼル車であるキハ48の改造車。金沢―和倉温泉間は電化区間なので、ディーゼル車を導入する必要はない。

なぜディーゼル車なのかという問いに対し、「改造して使える車両がたまたまディーゼル車だった」とJR西日本の担当者は語る。ただ、そのあとにこう付け加えた。「ディーゼル車なので将来、どこにでも行けることを想定している」。

七尾―穴水間は、第三セクターののと鉄道が運営しており、和倉温泉とレールでつながっている。のと鉄道は非電化区間なので、ディーゼル車であれば乗り入れも可能だ。

のと鉄道は観光列車「のと里山里海号」を保有している。こちらは豪華絢爛な花嫁のれんとは異なり、能登に息づく伝統工芸品を各所に配置した落ち着いたムードあふれる車両である。相互乗り入れともなれば、花嫁のれんと里山里海号の共演も期待できそうだ。

さらにJR西日本は、10月10日から富山県内の城端線と氷見線に新たな観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール」を運行させることも発表している。この長い車名はフランス語で「美しい山と海」を意味する。愛称は「べるもんた」だ。

しかも氷見線には、氷見市出身の漫画家・藤子不二雄A氏にちなんで「忍者ハットリくん列車」が走っている。そこへ花嫁のれん、里山里海号も加われば、能登半島付近に観光列車がズラリ勢ぞろいすることになる。

新たな観光列車王国として浮上した北陸地方。九州との「観光列車対決」は、今後ますます激しさを増していきそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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