2年半で5割値上げ「うまい棒」それでも愛される訳 価格アップで見えた、消費者との「信頼の貯金」

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うまい棒に話を戻すと、発売から2022年まで、一度も値上げしてこなかった事実が、消費者に「誠実さ」を与えた。その心意気が伝わっているからこそ、前回も、今回も、値上げが支持されたと考えられる。大事なのは、どれだけ「断腸の思い」が伝わるかだ。

もちろん、そこにはメーカー側の周知努力も求められる。2022年の値上げ時に、やおきんは「なくなっちゃうほうが、悲しいから」と題したツイッター(現在のX)の広告を展開した。ここでは「ちゃんと利益を出すことで、駄菓子文化の存続と発展に努めていきたい」「駄菓子に、未来を」との決意表明が示されている。今回の発表文にも、「お子様のお小遣いでも選ぶ楽しさを感じていただけるよう熟慮してまいりました」と書かれていた。

(PR TIMESより)

ガリガリ君も、前回に引き続き、今春の値上げで「前回より深くお辞儀をしております」と題した広告を打っている。モンスターカスタマーが問題視される昨今、下手に出ることが、必ずしも良いとは限らないが、誠意の演出にはもってこいだろう。

ちなみに、このプロモーションでは、「これからも、厳しい状況が長引くことも覚悟しています。知恵を絞り、企業努力を続けていく所存ですが、念のため、先々のバージョンも撮影しておきました。(撮影は1回ですませた方がリーズナブルなので)」と、110円までの謝罪写真をあわせて掲載しているユーモアも見せている。

「よくここまで踏みとどまった」の心意気が伝わった

うまい棒が発売されたのは、1979年7月。そこから40年以上にわたって、1本10円をキープしてきた。発売当時の日経平均株価は6200円前後だったが、それからバブル崩壊やリーマンショック、アベノミクスなどを経つつ、現在は6倍程度になっている。

ガリガリ君も1981年発売で、さほど誕生時期は変わらない。そこからの40年あまりで、消費者の金銭感覚も生活習慣も、少しずつ変化してきた。1989年に消費税が導入され、3%から5%、8%(そして軽減税率対象に)と上昇してもなお、税抜き価格は維持し続けた。

消費者の支払額が増えても、メーカーの利益は増えない。むしろ原料調達コストからすれば、消費税分の負担増だ。しかしながら、ほぼそのままの値段で展開し続けてきた。

10円から15円へ。「2年半で150%になった」と言うと、値上げ幅が大きく感じられるが、「45年間で150%」と考えれば納得がいく。また、もしも「10年ごとに1円ずつ」といった具合で、45年かけて段階的に値上げされていたら、今回のような反応は得られなかったようにも思える。

2022年までの企業努力が評価されたからこそ、「よくここまで踏みとどまった」の心意気が伝わった。うまい棒が大幅値上げでも愛されている理由は、これまで積み重ねてきた「信頼の貯金」にあるのだろう。

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