「踊る大捜査線」新作公開が示す刑事ドラマの悲喜 新作映画公開&過去作一挙放送から何が読み取れるか

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君塚さんはそのように刑事ドラマの定番を避けてリアリティを優先させたうえで、ドラマらしいエンタメ要素をプラス。

それは「所轄のノンキャリア・青島と本庁のキャリア・室井慎次(柳葉敏郎)が立場の差を超えた絆を育んでいく」「事件を通して感情をぶつけ合いながら、同じ理想の警察を求めてバディのようになっていく」という、視聴者に「警察はこうあってほしい」と感じさせる熱い関係性でした。

それまでのような刑事のカッコイイ姿ではなく、警察内部の人間模様にスポットを当てた「踊る」シリーズが圧倒的な支持を集めたことで、刑事ドラマというジャンルそのものが一変。逆に「警察内部の人間模様をベースにしながら、どのように主人公たちの活躍を描くか」という観点から制作されるようになり、現在に至っています。

2010年代、視聴率低下に悩まされた民放各局はリアルタイム視聴の多い中高年層を手堅くつかむために刑事ドラマを量産しました。

連ドラ全体の3分の1から半分を占めるクールもある中、その多くで警察内部の人間模様を描いたことで刑事ドラマというジャンルそのものが飽きられ、「踊る」に次ぐ国民的ヒット作は生まれていません。

事件解決や主人公の活躍に加えて警察内部の人間模様も描いた「『相棒』(テレビ朝日系)があるじゃないか」と思う人がいるかもしれませんが、同作は「中高年層を中心に安定した人気を保つことで連ドラシリーズ化する」という嗜好性がはっきりしたタイプの作品。

「コアなファンを満足させる脚本・演出を練る」ことを優先させるなど、「踊る」のようなあらゆる世代の人々に向けた国民的な刑事ドラマとは異なるコンセプトなのです。

「踊る」の影響を受けすぎている?

その意味で2000年代に入って以降の刑事ドラマは「『踊る』の影響を受けすぎている」という感がありました。

警察内部の人間模様に加えて、コメディパートを挿入する刑事ドラマが増えたことも影響の1つ。「踊る」は神田総一朗署長(北村総一朗)、秋山晴海副署長(斉藤暁)、袴田健吾刑事課長(小野武彦)の“スリーアミーゴス”が登場するシーンを筆頭に、笑いを誘い、視聴者に息抜きをしてもらうようなシーンを織り交ぜました。

その成功を受けて以降の刑事ドラマはコメディパートを必須要素のように入れる作品が目立ちます。

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