「内戦や武力衝突リスク」を左右する「3つの特徴」 2度目の紛争を回避した国の多くが持つ志向性
アメリカにおける統治能力の質は、ポリティ・インデックスによれば2016年、Ⅴ-Demでは2015年を境に低下している。その中でもはっきりした指標の1つは、アカウンタビリティ(説明責任)である。
中央選挙管理制度がないアメリカ
民主主義におけるアカウンタビリティの中心に自由選挙がある。他の多くの国々と異なり、アメリカには独立した中央集権的選挙管理制度が存在しない。ハーバード大学「選挙保全プロジェクト」創設者であり、選挙を専門とする政治学者ピッパ・ノリスによれば、移行期の新たな民主主義国家のほぼすべてが、選挙保全のために独立した中央選挙管理制度を創設しているという。選挙過程への信頼を構築するためである。
ウルグアイ、コスタリカ、韓国は、民主化に移行した際、すべて制度創設を行っている。オーストラリア、カナダ、インド、ナイジェリアなどの連邦制民主主義国の大国も、同様の方法による選挙管理体制が見られる。カナダにおいては、同国の選挙管理委員会が運営しており、有権者は居住地にかかわりなく同手続きに従うことになる。
同制度においては、投票用紙のデザイン、印刷、投票集計を、党派的政治の糸を引く余地もなく、正確かつ安全に遂行する手順が標準化されている。法的紛争が生じた場合も、裁判所による政治との嚙みしろなしに、処理可能である。
選挙保全プロジェクトでは、2019年報告で、各国の選挙法と選挙過程を調査し、2012~2018年のアメリカの選挙の質は、「他の歴史ある民主主義国、豊かな社会と比して低位にある」と指摘されている。同スコアはメキシコ、パナマ、さらには、コスタリカ、ウルグアイ、チリより相当に低位にあった。かくして、アメリカは有権者において不正疑惑は拡散されやすく、結果に対する疑念も持たれやすい。
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