メルケルに対する批判は正しいのか?--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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もちろん、慎重さだけでは十分ではない。時に指導者は、英国でチャーチル元首相が1940年に行ったように、支持者を感動させて奮起させるために現実主義の境界を拡張する必要がある。しかし、状況の理解に基づいた一定の慎重さがなければ、壮大なビジョンも誇大なものに成り果て、推し進めようとしている価値が損なわれてしまう。

30年代に孤立主義を放棄するように米国世論を説得する際、非常に慎重に行動したフランクリン・ルーズベルト元米大統領のように、メルケル独首相はユーロ救済を慎重に進めた。同首相は、ギリシャ経済を救済するためにドイツの資金を使うことに対する国民の疑念に直面した。この問題について独連立政権の意見は分かれ、同首相が率いるドイツキリスト教民主同盟は州選挙で敗退した。もし同首相がもっと大胆に行動していたら、さらに多くの支持を失っていたかもしれない。

10月末、同首相はついに欧州の将来ビジョンを表明し、一連のユーロ救済策に合意するように独連邦議会を説き伏せた。同首相が待ちすぎたかどうか、そして同首相のビジョンに説得力があるかどうかは、今後数カ月で決まるだろう。

Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

(週刊東洋経済2011年12月17日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

photo:א(aleph) CC BY-SA
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