ベンチャーで急増「ダウンラウンド」は悪手なのか 厳しさを増すスタートアップの資金調達環境

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高井宏章(以下、高井):特集の冒頭に紹介されているグラフを見ると、「市況悪化で明暗分かれる」とあります。資金調達額は2年連続の減少になりそうとのことですが、なぜですか?

宇都宮徹(以下、宇都宮):(資金調達額は)2021年、2022年と1兆円を目がけて上がっていったのですが、その後はアメリカをはじめとする金利上昇を背景に、リスクマネーに投資を振り向ける動きが世界的に冷え込んでしまいました。その影響が日本にも及んでいる形です。

高井:総額で見ても、1社当たりの調達額で見ても、減ってきていると。資金調達シリーズ別で見ると、中でもとくに厳しいのが「レイター」に位置する、比較的大きいベンチャーですね。この要因は?

(※外部配信先では図表などの画像を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

宇都宮:1つ大きいのが、2021~2022年ごろに調達した会社のバリュエーション(1株あたりの評価額)が上がりすぎてしまったことです。投資家からすると、それと同等の額、あるいはそれ以上の額でお金を出すのが難しくなっている面があります。

高井:噛み砕いて言うと、スタートアップは株式上場しているわけではないけれども、資金調達するときには「1株=〇円」という計算をして、株式を発行するのが一般的かと思います。その株価を決める際、「将来これくらい成長するだろう」というのを鑑みて試算するわけですね。

その試算を甘めにしてしまうと、株価が(実力以上に)高くなってしまう。次の資金調達のときに(実力に即した形で)前より安い株価を提示するとなると、前に高い株価で出資した人は評価減をしなきゃならない。

「安売り」という表現が適切かはさておき、そういうことをしたくないという力は働くと。でもこのようなケース、「ダウンラウンド」と言うそうですが、直近では増えてきているんですね?

宇都宮:はい。増えてきている現状があります。

フェアバリューになったのなら

高井:これは意外感がありました。なんとなくベンチャーって、市場全体で伸びているイメージがあったので。するとやはり、2~3年前はややバブルだったのかな?と考えられそうですが、いかがでしょう。

宇都宮:そうですね、編集担当としてはやや言いづらい部分もありますが(苦笑)、バブル感があったことは否めないと思います。

高井:マーケット記者を長くやってきた自身の感覚としては、フェアバリューになったのならそれで調達すればいいじゃないか、と思います。お金を取って、それでビジネスを伸ばすことを最優先すべきじゃないかと。

宇都宮:まさにその通りだと思います。ダウンラウンドで資金調達をしているということは、足元をいま一度見つめ直して、ちゃんと適正な価格でお金を入れようと決断したことの表れなので、一概に悪いというわけでもないかなと思います。

(ダウンラウンドを経て)また事業を成長させて、シリーズを積み重ねて評価額を上げていけば、それはそれでハッピーなことになるかなと。

高井:まあ、また下がってしまうと大変ですけど(苦笑)。

動画では、週刊東洋経済「すごいベンチャー100 2024年最新版」特集の内容を基に、「基礎から最新トレンドまで、必修ベンチャービジネス用語」「国産ユニコーン100社の政府目標の実現可能性は?」などについても解説しています。
制作:鈴木研一郎
宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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高井 宏章 経済コラムニスト / YouTuber

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たかい ひろあき / hiroaki takai

1972年生まれ、名古屋出身。1995年、日経新聞入社。マーケット、資産運用などを長く担当。2016年からロンドンに2年駐在し、2020年から退職まで編集委員を務めた。日経在籍時は電子版やYouTubeの「教えて高井さん」の動画解説で親しまれ、キャスターとして「日経ニュースプラス9」にも出演。「高井浩章」名義で出版した『おカネの教室』は10万部超のロングセラーに。Twitter、noteで経済にとどまらず、書評や教育論など幅広い情報を発信している。

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