どんな住人が住んでいるか聞いてみると「もの作りをしている人が多い印象ですね」と松田さんは語る。
「ここでの体験をすごく大事にしてくださり、ご自身の創作のきっかけにしてくださる方もいらっしゃいます」
スマートニュースのファウンダーの鈴木健さんや、独立研究者の森田真生さんも元住人のひとり。三鷹天命反転住宅のイベントで当時の思い出を語っている。
「荒川とギンズは、住人の皆さんと頻繁にコミュニケーションを取っていました。彼にとってここはある種、実践の場。どんなふうに暮らしているかをよく聞いていました。FAXでやりとりするのが好きな2人に、住み心地を書いて伝える住人の方もいらっしゃいました」
ドキュメンタリー映画にした住人も
なかには、インタビュー映像で伝えた住人もいる。映画監督の山岡信貴さんは、住人を撮影して映像を編集し、荒川さんとギンズさんに送ったという。その後、ドキュメンタリー映画『死なない子供、荒川修作』として、劇場でも公開された。
筆者も鑑賞し、一般的に考えられる快適さとは異なる住居で、それぞれ自由に創造しながら生活を送る様子が伝わってきた。やはり固定観念が覆される暮らし方で面白い。
ちなみに、5年ほど前から暮らしている妖怪絵本作家の加藤志異さんは、意外な発見として「五感の解像度が上がる」と話してくれた。
「自分の気配と他人の気配がまざって、不思議な雰囲気をつくりだす。子どもと猫は走りまわって、この家を楽しんで使いこなしています。寝ていると反響して、自分の呼吸音が外から聞こえたり、毎日驚きと発見があります」(加藤さん)
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