この部屋には、玄関以外に扉がない。シャワーブースに仕切りとカーテンが付いているものの、個室にも、トイレにもドアがない。
トイレは、手前のシャワーブースが目隠しとなり、周囲から見えないようになっている。
収納もほぼない。しかし見上げると天井に多数のフックがあり、ハンガーなどを使って吊るす収納ができる。
黄色い世界が広がる球体の部屋
住宅に対する常識が覆されていくなかで、筆者が最もワクワクしたのはこの球体だ。丸くくり抜いたような空間で、足元は傾斜していてツルツルすべり、バランスをとるのが難しい。
寝そべると、目の前が一面黄色になり、声を出すと大きく響いた。色や音に包まれるような気分になる。扉がなくても、どこかほかの部屋との境界を感じることができて、ひとりだけの世界を堪能できる。
床も、普通の家の床とはまるで異なる。うねって高低差があり、立つ位置によって見える景色が変わる。表面は凸凹して歩きにくいが、歩く感触の違いが面白い。室内には登れるポールがあり、久しぶりにのぼり棒を登ってみたが、身体が重く感じて思うように登れなかった。
室内で過ごしながら、身体をおおいに使っていることに気がついた。視覚や聴覚、触覚も、普段よりも研ぎ澄まされている。なぜこのような住宅ができあがったのだろうか。
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