20代の若者にとって、これは厳しいハードルとなります。国民生活基礎調査によれば、2023年においても、20代若者(未既婚含めた全体)の年収中央値は、334万円に過ぎず、400万円以上となると上位20%に限られてしまうからです。2022年就業構造基本調査での25~29歳の未婚率は、男77%、女68%であり、数字の辻褄は合っています。
SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が定期的に実施している「20代の金銭感覚についての意識調査」では、「結婚しようと思える世帯年収はいくらか」を聞いていますが、2014年時点では379万円であったものが、最新の2024年調査では544万円にまで高騰しています。実態としての個人の年収がそれほどあがっていないにもかかわらず、「結婚できる年収」だけがインフレを起こしているというのが今の若者を取り巻く状況です。
「年齢や学歴、年収が同じくらいの同類婚のほうが価値観が合うよね」などと喧伝され、「結婚は同類婚だ」などと若者が意識すればするほど、結果的に、大卒で若くしてある程度の年収を稼ぐことのできる大企業の若者だけが結婚できるだけの世界線ができあがることになります。
数字的には、大企業勤務比率と同等のせいぜい上位3割程度のものでしょう。そこから漏れた7割を占める多数派の若者は、「20代の今はお金がないから結婚できない」「稼げるようになるまで結婚はしない」という方向に進み、運よく結婚可能年収を稼げるような年齢になったときには「もう相手がいない」または「今さら結婚するよりも自分のためにお金を使おう」と結果的非婚という道を歩んでしまうことになります。
パワーカップルなどと注目されているのは一部
何度も言いますが、今は1990年代までのような晩婚化は起きていません。晩婚化というのであれば、仮に20代で結婚しなかったとしても30代で後ろ倒し結婚して、20~30代トータルでは婚姻数は変わらないはずですが、20代で結婚機会を逃した若者は、30代になって晩婚化するのではなく、そのまま非婚化していっているのです。
20代の若者が20代のうちに結婚できなければ、生涯非婚になる。それが今起きている婚姻減の現象です。
結論としては、同類婚は増えてはいません。それどころか、かつて同類婚ができた高卒同士や年収300万円未満同士の同類婚だけが減少しており、一部の上位層の同類婚だけが進み、パワーカップルなどと注目されているにすぎません。いわば、本来婚姻のボリューム層であるかつての中間層の若者の同類婚を含む婚姻全体が地盤沈下しているわけです。
「同類婚が増えている」と言う人は、自身も上位層である大企業社員や官僚や政治家である場合が多く、なるほど彼らの「同類」の話にすぎないのだなと感じます。
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