緩和期に膨らんだ「住宅ローン残高」のヤバい実態 20~40代の負債は預金の倍以上になっている

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住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」によれば、2024年4月調査での住宅ローンの借入形態は、「変動型」76.9%、「固定期間選択型」(借入当初から一定期間、金利が固定され、そののちに変動金利となるもの)15.1%、「全期間固定型」8.0%だった。

利用者の多くが、低金利の長期化を受けて「変動型」を選択した。この結果、短期金利が上昇すれば、利用者の負担がただちに増える構図にある。

国土交通省の「令和4年度住宅市場調査報告書」によれば、分譲集合住宅(分譲マンション)の購入資金は平均5279万円、うち自己資金平均2259万円、借入金同3020万円だった。借入金に対する年間返済額は約148万円であり、年収に対する住宅ローンの返済負担率は17.4%だった。

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超低金利の時代に適用された変動金利は当初の適用利率が1%未満のものが多く、かつ、住宅ローン減税などの国からの支援もあったために、実質的な金利負担はごくわずかだった。短期金利が上がれば、利用者の負担は増える。

借入金を3000万円と仮定すると、変動金利が0.25%上がれば当初の返済負担額は年間7万5000円増える。0.5%上がれば、15万円の負担増だ。家計部門も、異次元緩和で預金残高は大きく増えたが、その大半は高齢者の保有である。

高齢者の家計は利上げの恩恵を受けるが、20代、30代、40代は預金残高の倍以上の負債残高(住宅ローン残高)を有しており、若い世代の家計は圧迫される。利上げ幅が拡大すれば、住宅ローンの条件変更も多数発生する可能性がある。注視を怠れない。

山本謙三 オフィス金融経済イニシアティブ代表

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やまもと けんぞう / kenzou Yamamoto

1954年福岡県生まれ。76年日本銀行入行。98年、企画局企画課長として日銀法改正後初の金融政策決定会合の運営に当たる。金融市場局長、米州統括役、決済機構局長、金融機構局長を経て、2008年、理事。金融機構局、決済機構局の担当として、リーマンショックや東日本大震災後の金融・決済システムの安定に尽力。2012年NTTデータ経営研究所取締役会長。2018年からはオフィス金融経済イニシアティブ代表として、講演や寄稿を中心に活動している。

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