小田急ロマンスカー「VSEと性格真逆」EXEの将来 通勤と観光に柔軟対応、次世代特急で置き換え

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EXEの後、“ロマンスカーの伝統”に回帰するかのように2005年にデビューしたのがVSEだった。窓の下にロマンスカーの伝統色「バーミリオン・オレンジ」がベースの細い帯を入れた「シルキーホワイト」の車体で、先端から後方へ流れるようなデザインが目を引いた。

VSEの愛称は「Vault Super Express」の略。Vault(ヴォールト)は客室の約2.5mある「ドーム型の天井」を意味する。幅4mの側面窓に沿って、真正面より少し外側を向いたシートを配置した。先頭車の運転室を客室の天井裏に上げ、大きな曲面ガラスで前面の眺めを楽しめるようにした展望席や、車両と車両の間に台車を配置した連接構造を復活させた。

10両編成で、定員は358人。車内は通常の客席のほか、4人がけのセミコンパートメント「サルーン」席やカフェカウンターも設置した。観光特急としてのロマンスカーのフラッグシップとなった。

VSE50000 先頭車側面
流線形デザインが人気だったVSE。先頭車両には展望席=2022年4月(記者撮影)
VSE 展望席
VSEの展望席。運転室は“天井裏”にある(記者撮影)

観光と通勤のバランスは?

2017年以降、EXEは10両編成(6両編成+4両編成)2本を残して、EXEαにリニューアルした。分割・併合を可能にしてフレキシブルな運用ができるようにしたEXEの特徴はMSEにも引き継がれている。MSEは「Multi Super Express」の略。地下鉄乗り入れでロマンスカーの活躍の場を広げ、マルチの名のとおりJR御殿場線直通や朝夕の通勤特急まで幅広い運用についている。

一方、展望席やバーミリオン・オレンジの車体色はGSEで採用されている。GSEは観光特急としての運用とともに通勤利用も考慮した車両で、特殊な連接構造は受け継がず、カウンターやサルーン席なども設けていない。2023年にVSEが完全引退し、展望席のあるロマンスカーはGSEだけになった。

EXE MSE 貫通型先頭車 並び
貫通タイプのEXEとMSE。MSEは地下鉄・JR御殿場線直通などで幅広く運用する(記者撮影)

VSEで初めてデザインを担当した、建築家の岡部憲明氏が代表を務める岡部憲明アーキテクチャーネットワークはEXEαへのリニューアルを含めてロマンスカーにたずさわってきた。新たにその役割を担うCOA一級建築士事務所は「誰もが快適な空間で楽しい時間を過ごすことができ、ワクワクするような経験ができる車両を探求していきたい」としている。

目標どおりにいけば2018年3月のGSE以来、11年ぶりに新型が登場することになるロマンスカー。デザインや車窓を重視した観光特急と、大量輸送と運用の柔軟性に対応できる通勤特急のバランスをどうとるのか。

小田急の広報担当者は「EXEはすべてαにリニューアルする予定だったが、コロナ禍の影響で2本の編成については見送られていた。先に引退したVSEの後継車両を投入するタイミングで代替することになった」と話す。「開発の着手を発表したばかりでコンセプトをこれから検討する段階」といい、EXEのように分割・併合できる車両かどうかを含め、運用面についても「まったく決まっていない」という。

今後、情報発信をする小田急の一挙手一投足に注目が集まることになりそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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