さらにはここから人件費の上昇が押し寄せます。長らく3K(きつい・汚い・危険)と言われた建設業界の現場は恒常的な人手不足で、若年層が手薄で高齢化も進む中、現場の大工さんの日当を相当程度上げないと人が集まらなくなりつつあります。
正確には、数のうえでは足りるものの、まともな仕事ができる人を確保しようとすると、コストアップせざるを得ないということです。
新築住宅の「合成の誤謬」
都市郊外の徒歩圏外や地方では、しばしば2000万〜3000万円台の新築住宅が売れたりします。それは超低金利の住宅ローンを利用し、住宅ローン控除を加味すると、近隣で賃貸住宅を借りて賃料を払うより月々の支払いが安く上がるからです。
しかしこうした立地のニーズは昨今、「超」がつくほど限定的です。共働き世帯が圧倒的多数となった現在、求められるのは駅前・駅近など利便性の高い物件で、また若年層であるほど自動車保有比率が低いという現状もあります。
自治体の経営上、そうした徒歩圏外の立地において「上下水道・道路・公園・橋」といったインフラ修繕をはじめ各種の行政サービスをまんべんなく提供するのは極めて非効率であるため、早晩「背に腹は代えられない」として、行政サービスは後回しにされるか、提供されなくなるでしょう。
もっと思い切って「人が居住できる都市計画」の定義から外される可能性も十分にあります。中長期的には、たとえ東京のような大都市であっても、街のコンパクト化を進め、行政効率を上げていかなくては、自治体経営が立ち行かないのです。
現行の金融システムは根本的な欠陥を抱えています。賞味期限切れで、もはや持続不可能でしょう。したがって近い将来に大きな変革が起こることが予想されます。これには、国家財政の破綻や新しい金融システムへの移行が含まれます。
自治体の主要財源は「住民税」と「固定資産税」です。金融リセット(国家財政の破綻や新しい金融システムへの移行といった大きな変革)後の世界では、中央から入ってくる「地方交付税交付金」やらいろんな名目の補助金をあてにした自治体経営はしない・できない前提で世の中が動きそうだと考えておいた方がいいでしょう。
こうした将来は都市計画から外れそうな立地にも、現在では新築住宅が造られ、個人の損得勘定で売れてしまうという、経済用語でいう典型的な「合成の誤謬(ごびゅう)」が起きています。
「合成の誤謬」とはかんたんに言えば「個人やミクロの視点では合理的な行動も、全体やマクロの世界では、必ずしも好ましくない結果が生じてしまうこと」です。
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