もし月がないと「地球の環境」はどこまで過酷に? 今の3倍の速さで自転し、天候も大荒れになる
このように、地球とはまったく異なる環境ですが、いつか人類が月に住むときがくるかもしれません。
魅惑的な世界
2022年、NASAの国際宇宙探査計画「アルテミス計画」(2026年以降に月面に人類を送って月での持続的な活動を目指す)の最初のミッション「アルテミスI」が成功しました。月の軌道には、新たな宇宙ステーションとなる「ゲートウェイ」も建設予定です。日本のJAXAも居住棟の技術提供を担当しています。さらにNASAはアポロ計画以来、約50年ぶりに月面に人類を送る計画を進めています。
再び月面へと向かう人類ですが、月にはいったいどのような魅力があるのでしょうか。
まず一つは、エネルギー源として期待される「ヘリウム3」という物質の存在です。ヘリウム3は大きなエネルギーを生み出す核融合反応の材料になります。地球上にはほとんどありませんが、月の土壌には数十万tあると推定されています。磁場によって守られている地球とは異なり、磁場の弱い月には太陽から吹き出す太陽風によって大量のヘリウム3が運ばれているのです。このヘリウム3が1万tあれば、全人類の100年分のエネルギーが賄えるとも言われているのです。ただし、ヘリウム3を取り出すには、大量に月の砂を処理する必要があり、さらに高度な核融合技術も必要なため、実用化はまだずっと先になりそうです。
次に、月面に「巨大望遠鏡」を作る計画があります。月には大気がないので、星の光が途中で吸収されたり散乱されたりせずに届き、地球よりも観察がしやすいのです。また、月の裏側は地球からの人工的な電波が届かないので、電波望遠鏡を建設するのに理想的な場所のようです。
そして、月での暮らしを考えたときには、月にはアルミニウム、チタン、鉄などが豊富にあり、月面で利用できればさまざまな素材を現地調達することが可能です。さらに、月の南極や北極には、「永久影」と言われる場所があり、そこには水が氷として地下にあるのではないかと考えられています。
そのため、現在世界中で月面での水探査の計画が進められています。生物が生きていくには欠かせない水ですが、月面で水が豊富に発見されれば、月面基地への大きな一歩になりそうです。
課題を一つ一つ確実にクリアしていけば、月面基地の建設は十分に実現可能だと言います。月で暮らす未来は、それほど遠くはないのかもしれません。
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