新iPhone、差別化戦略のカギを握るキーワード どのようなiPhoneのポートフォリオを作るのか

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もうひとつの線引きとなるのが、前述したiPhone 15 Proで採用されたA17 Pro内蔵の推論エンジンだ。この世代の推論エンジンで、アップルは内部構造に大きく手を入れ、取り扱うデータ精度を変えることで2倍速で動かす仕組みを取り入れた。

Apple Intelligenceはユーザーが行う質問の大多数を端末内で処理しながら、長い文脈の中から結論づけるべき質問に関しては、セキュアクラウドと呼ぶ独自設計サーバとの連携で処理する。ユーザーはその境目を意識することはないが、端末内処理が可能になる最低ラインが、A17 Pro(およびApple M4)内蔵の推論エンジンになる。

言い換えればiPhone 15が搭載するA16 Bionicでは動作しないということだ。ここで前回のコラムに立ち返ってみよう。

そう、Apple Intelligenceに対応できるハードウェアになっているだろうiPhone 16、16 Proが登場後、低価格版としてラインナップに残されると考えられるiPhone 15ではApple Intelligenceが利用できないため、将来が期待されるこの機能を利用するには"最新モデルが必要"ということだ。

AI機能強化は他ジャンル製品との連携も強化する

近年のiPhoneにおいて、最新モデルを魅力的に引き立てるもっとも大きな要素として、内蔵カメラが重要だったことに異論はないだろう。iPhone 16/16 Proにおいても何か新しい仕掛けを施すことは間違いないと思う。

しかし、着実な進化はあったとしても、そこに革新的なアイデアが盛り込めているかといえばドラスティックな変化を求められないほどには成熟している。

では、推論エンジン活用でどこまでの違いが出せるだろうか?

前回のコラムでも指摘したように、実はiPhoneのライバルはiPhone自身という側面が大きい。価格帯の違いなどもあり、Android搭載スマートフォンの地力は着実に高まり、AI機能もクラウドを通して遜色ない体験を届けることが可能だ。

アップルがApple Intelligenceを軸にした、新しい価値の創出を急いでいるのは、こうした開発競争軸とは異なる付加価値を、この路線にみつけているからだろう。

Apple Intelligenceに関しては、筆者が6月にレポートした記事で詳細に触れているが、その大きな特徴はプライベートな情報の塊であるiPhone内部で管理する情報、情報の履歴、異なるアプリ間での文脈探索を、第三者に漏らすことなく完全な匿名化を保証したうえで、人工知能によるアドバイスを得られることだ。

さらにApple Intelligenceは最終的に、他のアップル製デバイスの事業も強化する。

iPhoneに集中するプライベートな情報、コミュニケーションを把握する強力な個人向けAIサービスは、AirPodsシリーズを通して音声で利用可能になり、その活用範囲はHomePodシリーズにも拡大するだろう。

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