Apple Watchのように、ユーザーインターフェイスに制約のある小型デバイスでは、なおさらに利用者個人にカスタマイズされるAIサービスの利用価値は高くなる。
さらに、まだコンセプトを完璧に練り上げるまでの途上にあるApple Vision Proでの(将来的な)Apple Intelligenceの活用は、さらに大きく広がるはずだ。このデバイスでは、他ユーザーからはのぞき見ることができない情報を空間の中に展開できるため、プライベートな情報を活用した、よりプロアクティブなアシスタントガイドが行えるようになる。
課題は"Nモデル比率"低下への対策
ではApple Intelligenceがアップルにとってのあらゆる課題を解決するのか。
前述したようにApple Intelligenceは、年内に追加アップデートとして提供されるiOS 18.1から"アメリカ内を皮切りに順次"、グローバルに拡大していくベータ版機能であり、正式版ではない。また中国とEU圏内での提供は現時点で予定されていない。日本市場においては提供予定だが、その時期はイベント前の現時点ではまだ聞こえてこない。
同社が過去に提供してきた、こうした"ベータ版機能"はアップル社内で消化したうえで、翌年の製品で十分に成熟した機能として正式に取り込まれることが多いため、Apple Intelligenceが他社との違いを明確に出し始めるのは、来年の秋以降かもしれない。
AI言語モデルに関しては、端末内の推論エンジンで完結できるコンパクトなモデルをMicrosoftやGoogleも開発、製品に組み込んできており、Apple Intelligenceが本領を発揮し始めるまでに、アップルのプライベートクラウドに匹敵する解決策をライバルが提案することも十分に考えられる。
また、こうした中で消費者の目線からは(特に実際の提供が先になる日本市場では)Apple Intelligenceの利点も見えにくい。"将来的にApple Intelligenceが利用できる端末"とそうではない端末の価値に対する感覚が変化するまでには、少し時間がかかるはずだ。
iPhoneのライバルが、より低価格な旧モデルのiPhoneであるなら、アップルにとっての直近の課題は、ではその年の最新モデル、いわゆる"Nモデル"の販売比率をどのようにして低下させないかに集約される。
9月10日のスペシャルイベントでは、そこに対して何かアップルができることがどれだけ残っているのか(あるいは残っていないのか)について明らかになるだろう。
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