スズキ、軽の王者が抱える内なる課題 ハイブリッド車の投入が起爆剤となるか

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国内市場に目を向けると、スズキの2014年度の自動車販売台数は75万台。そのうち軽が約9割を占める。だが、今年に入って軽市場が低迷しており、2015年1月~7月の累計で約15.7%減。スズキも同様に16.3%減と苦戦している。特に、軽自動車税が従来の1.5倍(7200円が1万0800円)に引き上げられた4月以降は減少幅が約18%と拡大している。

日本独自の規格である軽は排気量や車体サイズに制限がある反面、税制などで優遇されてきた。保有コストの低さに加え、近年、各社が魅力的な軽を次々と投入したこともあり、国内の新車販売に占める軽比率が上昇。特に地方の普及率が高く、2014度の販売台数は初めて全体の4割を超えた。

スズキのトップであり、軽の”守護神”として君臨してきた修会長(撮影:今井康一)

存在感を増すのと比例して軽への風当たりが強まっている。国としては税収減やガラパゴス化による国際競争力低下への懸念があり、軽を扱っていない自動車メーカーには税制優遇に不満がある。こうした批判に対し、「地方イジメ、貧乏人イジメ」と強く反発してきたのが修会長だ。持ち前の発信力、行動力を存分に発揮し、”軽の守護神”として君臨してきた。

 弱まる守護神の”力”

だが、2015年4月から保有にかかる軽自動車税が1.5倍になったように、修会長の”神通力”も徐々に弱まりつつある。そして今後、軽の優遇は徐々に縮小していく可能性が高い。足元の販売不振は、その未来に懸念を抱かせるには十分だろう。

修会長はCEOとしてスズキの経営の前面に立っているが、社長の座を退いたことに、軽のライバルであるダイハツ関係者が「ウチにとっても影響がある」と顔を曇らせていた。カリスマが経営の第一線から退けば、スズキの経営にとどまらず、日本の軽メーカー全体にも大きな課題となる。

軽を守り、育ててきたのが修会長なら、俊宏社長のミッションは軽のスズキからの脱却だ。今回の新車発表について「社長になる前から予定されていた」(俊宏社長)とは言うものの、社長としての”デビュー戦”がソリオとなったのは、やはり偶然ではなく必然だったのだろう。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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