苦境・ソニーが懸けるクラウド戦略の成算

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 もう一つの脅威がアマゾン。すでに音楽・映像配信を手掛けている同社が11月、199ドルの格安タブレット「キンドル・ファイア」を発売した。端末販売だけでは赤字とみられるが、流通業のアマゾンにとって重要なのは、多くの商品を買ってもらうこと。一気に普及させた後、ソフトの販売で回収する計算のようだ。

革新的な操作性や使い勝手のよさといった付加価値を生み出し、端末販売で儲けるアップルとその逆を行くグーグルやアマゾン。ソニーは二つのビジネスモデルの“いいとこ取り”を狙う。ソフトでもハードでもしっかり稼ぐ腹積もりなのである。

11月中旬には、投資ファンドなどと共同で英音楽大手EMIの音楽出版事業を買収すると発表。130万曲超の楽曲著作権を手に入れ、音楽出版で世界トップに躍り出る。

ただ問題は、どうやって他のサービスと差別化を図るか、だ。

ソニーはSENについて「将来はソニー端末に限らず、オープン戦略を取っていきたい」(木元部長)という。もともとソニー・ミュージックやピクチャーズは、SENの開始前からアイチューンズなどで配信している。それをソニーの端末だけに配信するようにすれば差別化できるが、現実的ではないだろう。ソフト会社としては、多くのユーザーを抱えるアップルなどにも提供するほうが収益機会は拡大するからだ。

ソニーのハード部門は収益悪化が著しい。特にテレビは今期1750億円もの赤字に転落する見通しだ。ソフト部門は、ハードの不振を支える貴重な収益源。両者の微妙な力関係の中で、“融合”を推し進めることは簡単でなさそうだ。

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(前田佳子 =週刊東洋経済2011年12月3日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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