苦境・ソニーが懸けるクラウド戦略の成算
「4スクリーン戦略を推し進める」
11月初旬、2012年3月期の業績見通しを下方修正し、4期連続の最終赤字に沈む見通しを明らかにしたソニー。業績低迷の出口が見えない中、平井一夫副社長は中間決算説明会の席上、この言葉を繰り返した。
「4スクリーン」とは、スマートフォン、タブレット、パソコン、テレビの四つの端末を指す。ソニーは音楽や映像をインターネット上に保管し、どの端末でも簡単にアクセスして楽しめるクラウドサービスの開発を2年前から進めてきた。
10月末に発表した欧州企業と折半出資の携帯電話メーカー、ソニー・エリクソンの完全子会社化もその一環だ。ハワード・ストリンガー会長兼CEOは「4スクリーン戦略の体制が整った」と胸を張る。
社内で盛んに飛び交う フレーズ「統合UX」
韓国サムスン電子など海外勢の台頭や円高の影響などで、競争力を失いつつある日本の電機メーカー。ただソニーは他社と違って、テレビやゲーム機といったハードの製造・販売だけでなく、音楽のソニー・ミュージックや映画のソニー・ピクチャーズといったソフト会社を抱える。
その強みを生かそうというのが、4スクリーン戦略だ。ストリンガー会長はかねてから「ソフトがなければ、ハードはただの箱」と言ってはばからない。すべての端末をネットワークでつないで、ソフトの配信などのサービスを提供。ハードとソフトの両輪で利益を稼ぐつもりだ。これはアップルが確立した「アイチューンズ」のビジネスモデルに近い。