日本で「アニミズム」が保存された3つの根本理由 「自然信仰」を踏まえた「地球倫理」の時代へ

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単純な例で言えば、中東の砂漠周辺で生まれたキリスト教がイタリアなど(風土的にもより温和な)地中海世界に広がっていく過程で、母性的な聖母(マドンナ)信仰が重要な意味をもつようになっていったことなどもそうした例である。そうした意味では日本に渡来した仏教(の一部)がアニミズム的性格を包摂していったことは、ある意味で自然な変容であったとも言える。

もう1点は、「神仏習合」のような現象――外来の普遍宗教が土着の信仰と何らかの形で融合するという現象――もまた、必ずしも日本に限られたことではないという点である。

たとえば北欧のノルウェーには「スターヴ教会」という独特の形状の木造教会があるが――「アナ雪」の映画を通じて日本でも注目された――、これは(外来の普遍宗教である)キリスト教と、北欧の地域固有の建造物が何らかの形で融合したものとされる。

ただしこれはあくまで建造物に関するレベルであり、またそれがキリスト教が渡来する以前の北欧の土着の信仰や(hofと呼ばれる)信仰の場所ないし建造物とどのような関わりがあるかについてはさまざまな議論があるが、外来の普遍宗教と土着の信仰とのある種の相互作用を示していることは確かだろう。

地理的に日本により近い例では、東南アジア各地において、普遍宗教としての仏教やイスラム教が他の地域から渡来し広がっていった一方で、自然信仰を含む土着の信仰がなお保存されたり、融合ないし習合しているという例は少なくない(たとえばミャンマーにおける「ナッ信仰」と呼ばれるアニミズム的な土着信仰と仏教との融合などはそうした例の一つである)。

このように、地球上の各地において「外来の普遍宗教と土着の信仰が融合(習合)する」という例は一定程度見られる。しかしその中でも日本における「神仏習合」はかなり明確な融合ケースと言えるだろう。

そして、ここで重要なのは次の点である。すなわち仏教という、高度に体系化・言語化された普遍宗教と融合したことで、日本において原初にあったアニミズム的な自然信仰は(やや俗な言い方をすれば)ある種の“お墨付き”あるいは普遍性を獲得することになり、それによって後の時代まで長く保存されることになったと言えるのではないだろうか。

日本においてアニミズムが保存された背景として「神仏習合」を挙げたのは、以上のような趣旨である。

「ガラパゴス的辺境性」とアニミズム

さて、日本でアニミズム的自然観が保存された最後の要因として挙げた3)「ガラパゴス的辺境性」についてはどうか。

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