日本で「アニミズム」が保存された3つの根本理由 「自然信仰」を踏まえた「地球倫理」の時代へ

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このように「八百万の神様」あるいは「鎮守の森」といった、アニミズム的な自然観の現代的な意義が、環境問題やエコロジーに関する文脈において再評価されるようになり、またそれが日本においては(かろうじてというべき面もあるが)伝統文化として保存されていることが新たな文脈で認識されるようになっているのである。

日本でアニミズムが保存された理由

ところで、ではなぜ日本においてはこうしたアニミズム的な自然観が比較的保存されてきたのだろうか? これはじっくりと掘り下げていくべき興味深いテーマと思われるが、さしあたり以下の3つが挙げられるだろう。

1)風土的環境
2)神仏習合
3)ガラパゴス的辺境性

まず1)の「風土的環境」。これは日本の場合、湿潤・温暖な気候の中で生物相が相対的に豊かであることに加え、“南北に長く伸びる火山帯の列島”という環境が起伏に富んだ自然景観を生み、また生活レベルにおいても山、川、海、森などが身近に感じられると同時に、台風や豪雨、地震など自然災害も多く、自然は「恵み」をもたらす存在であるとともに「畏怖」すべき存在でもあった。

こうした(脅威としての側面も含んだ)自然環境の豊穣さが、アニミズム的自然観のいわば物質的・環境的基盤として作用したことは確かなことだろう。

ちなみに生物多様性の議論などで指摘されることだが、日本の既知の生物種数は9万種以上、分類されていないものも含めると30万種を超えると推定されており、生物相が豊かであることに加え、日本は「固有種」が多いことで知られており、陸に住む哺乳類の約4割、爬虫類の6割、両生類の約8割が固有種とされている(「生物多様性国家戦略」等)。また世界で36カ所の「生物多様性ホットスポット」(=地球上で生物多様性が特に豊かでありながら同時に破壊の危機にさらされている場所)の一つとしても日本は認定されている。

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