あなたのスマホを乗っ取る「SIMスワップ」の脅威 本人確認に必要なショートメッセージを受信

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携帯電話契約時の本人確認については、事業者や関係省庁の思惑が交錯する。

警察庁としてはスマートフォンが犯罪に利用されるのを防ぐため、本人確認の厳格化を求めている。一方でキャリアとしては、他社からユーザーを少しでも取り込みたいため、本人確認はできるだけ簡素化したいというのが本音だ。

特に2020年に第4のキャリアとして新規参入した楽天モバイルは昨年まで契約者の獲得に苦労していた。

実際「料金プランの安い楽天モバイルを契約しようと思ったが、本人確認が難しくて諦めた」という人がおり、楽天モバイル事業の赤字に苦しむ三木谷浩史会長にとって頭痛の種であった。

本人確認を簡素化して契約者数を伸ばした

オンラインで携帯電話会社を契約するには、運転免許証やマイナンバーカードなどをスマートフォンのカメラで撮影し、さらに自分の顔を撮影しつつ、顔を横に振ったり、まばたきしたりと結構、面倒な作業が必要となる。その段階で、操作が上手くいかず、挫折する人がとても多いのだ。

そこで、楽天モバイルは2023年、すでに楽天銀行や楽天証券、楽天生命のいずれかを契約している人は「本人確認済み」として、楽天モバイルの新規契約時の本人確認書類の撮影、提出を不要とした。

これにより、本人確認の手続きが大幅に簡素化。同時に法人契約やキャンペーンなどが功を奏し、2024年から楽天モバイルの新規契約数が一気に伸びることになった。

プラスチックによる物理的なSIMカードではなく、契約情報をスマートフォンに直接書き込むことで通信できる「eSIM」に対応する機種も増えている。オンライン契約とeSIMを組み合わせることで、ショップに行かなくても簡単にキャリアを乗り換えることができるため、ユーザーにとっても利便性は高い。

ただ、一方で、本人確認が手薄な状態でeSIMを発行すると、厄介なことになると懸念するキャリアもある。

KDDIの髙橋誠社長は「eSIMに関してはネットで非常に簡単に再発行できてしまう事業者がいると認識している。このあたりについては総務省に指導していただきたい。乗り換えの推進よりも重要な課題ではないか」と指摘する。

乗り換えやすさを重視し、本人確認が手薄になれば、結果として、犯罪に利用される可能性が増してくる。

キャリア間の競争を促進しつつ、いかにSIMスワップを防いでいくか。難しい舵取りが迫られているのだ。

石川 温 スマホジャーナリスト

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いしかわ つつむ / Tsutsumu Ishikawa

日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、日経TRENDY編集記者としてケータイ業界などを取材し、2003年に独立。現在は国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップル、海外メーカーなども取材する。まぐまぐにてメルマガ「スマホ業界新聞」を配信。YouTubeチャンネル「石川温のスマホ業界ニュース」にて記者会見のライブ中継や解説動画を流している。近著に『これからの5Gビジネス』(エムディーエムコーポレーション刊)がある。

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