東証と大証が経営統合で正式合意、システム統合ならコスト節減大も、取引活性化の効果は未知数

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 現在、別々のシステムを使っているが、これを統一することでランニングコストや減価償却費が節減され、年間70億円程度のコスト削減効果を見込む。前期2011年3月期の東証の営業利益136億円、大証の同76億円を考えれば、その節減効果はかなり大きい。問題はどこまでスムーズかつ早期にシステム統合を実現できるかだ。

また、市場の取引活性化、流動性向上がどこまで実現できるのかは不透明だ。東証は現物市場の取引高ですでに国内9割以上を占めており、大証と統合しても、取引量はあまり増えない。「東証・大証の重複上場銘柄の取引が一本化されることで流動性が増し、価格の精緻さが増す」との指摘もあるが、非常にマイナーな効果にとどまるだろう。

一方、デリバティブ市場については逆に大証が国内最大シェアを占め、東証もそれに次ぐシェアを持つ。東証は東証株価指数(TOPIX)を主な原指標とし、大証は日経平均株価を原指標に使っており、将来的には大証でそれぞれのデリバティブ商品が取引されると見られる。デリバティブの清算機関が統合されれば取引の証拠金が軽減され、投資家の取引量が増大する期待はある。ただ、今のところ大幅な増大は見込みづらい。

両社長ともに、取引所の国際的な競争・再編が進み、中国や韓国などの新興市場や電子取引所が急速に台頭するなか、日本の取引所が地盤沈下する「危機感」を共有したことを統合決断の決め手に挙げている。
 
 最近は国際的な金融市場の混乱もあって取引高が特に落ち込んでおり、この21日から取引時間を延長したが、効果は見られない。投資家の厚みが増したアジアの市場での上場や資金調達を考える日本企業も増えている。

いかに国内外の投資家の資金を呼び込み、魅力的な企業や商品を上場することができるかが証券市場発展の最大のカギ。国内取引所の統合は、そこへ向けてのほんの一歩に過ぎない。
(中村 稔 撮影:今井康一 =東洋経済オンライン)

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