新就活スケジュール、「抜け駆け」横行の実態 選考後ろ倒しで企業も学生も疲れ切っている

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スケジュール変更の影響を受けたのは、理系学生と公務員志望の学生だ。理系学生にとって、4年生は研究のための重要な時期だが、就活で研究に集中できない。

また公務員試験は、6~8月が多いために、就活と重なってしまう。教職課程を履修している学生も、6月に教育実習に行くケースがほとんどで、その間は企業訪問ができない。明治大学法学部のある学生は、「就職を考えて教育実習に行かないことにした」と、教員免許取得をあきらめてしまった。

実質的に就活は早まってしまった

結果的にスケジュールの後ろ倒しは、就活を実質的に早め、むしろ長期化させている。3年生の6月にインターンシップの選考を受け、夏休みにインターンシップに参加した学生が、4年生の8月になっても就活を続行すれば、就活期間は1年間を優に超える。

長期間の就活に疲れ果ててしまい、途中で妥協した学生も少なくない。日本大学経済学部のある学生は、6月に中堅住宅メーカーから内定を獲得。すると、会社からイベントに頻繁に呼び出され、メンター役の若手社員からよくメールが届くようになった。結局「いろいろな業界を幅広く見る予定だったが、就活に疲れたのでここでいい」と入社を決めたという。

就活の長期化は、学生には内定を断れない雰囲気を作り、企業側は内定者を囲い込むオワハラ(=就活終われハラスメント)を起こしかねない。形骸化した新スケジュールは誰にもメリットのないまま進んでいるようだ。

「週刊東洋経済」2015年8月29日号<24日発売>「核心リポート05」を転載)

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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