55年連続「ミシュラン三つ星獲得」店が明かす秘密 巨匠ワイズマン監督が撮った4時間の長編大作
この時点でワイズマンさんと信頼関係ができたので、私たちは100パーセント信頼して、ここは見せないでおこうとか、ここは隠しておこうという秘密は一切なしで映画の撮影に臨みました。
――忙しいレストランで撮影を受け入れるのは大変だったのでは?
ワイズマン監督、カメラ、音声の3人だけのチームでしたし、少し離れたところから撮影していたので、われわれにベタッとくっついているわけではなかったんです。
ワイズマンさんとはすぐに打ち解けて、私はフレッドと呼んでいました。彼らは近くに一軒家を借りて泊まり込んでいて、2週間もたつと撮影していることを忘れるくらい、トロワグロのスタッフに溶け込んでいましたね。
レストランの社員食堂で午後2時くらいに一緒にまかないを食べたり、ディナーのサービスが終わった夜11時に夜食をとったりして、とても仲良くなりました。
当初は8時間の映画だった
――撮影はどのくらいの期間、続いたのですか?
2カ月くらいたったとき、ワイズマンさんから「ありがとう、ようやくいい映像が撮れた。これから1年、僕はトロワグロ・ファミリーと過ごすよ」と言われました。つまり、撮りためた映像を1年かけて自分で編集するということです。
ようやく仕上がったという連絡をもらったとき、なんとこの映画は8時間の長さでした。160時間の映像を8時間にしたけれど、もうこれ以上、削ることはできないと言うのです。
私は料理人なので、フォン・ド・ボーを思い出しました。フォン・ド・ボーというのは、寸胴鍋にニンジンやタマネギ、肉の端切れや骨を入れて長時間煮詰めたもので、肉や野菜の旨味が凝縮されています。
8時間に編集した映画はフォン・ド・ボーみたいにいろんな味が詰まっている。でも、みんな8時間も映画館にいられないから、結局、4時間に編集されました。
――完成した映画をみて、どう思いましたか?
芸術的で真実を描き出している、素晴らしい映画です。レストラン、料理、キッチン、サービスがどのような仕組みで動いているかを包み隠さず見せています。
食材の生産者さん、周りの風景も映っています。私たちトロワグロ・ファミリーとレストランを取り巻くすべての世界を見ていただけると思います。
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