55年連続「ミシュラン三つ星獲得」店が明かす秘密 巨匠ワイズマン監督が撮った4時間の長編大作
――撮影時のエピソードを教えてください。
90歳を超えていたワイズマンさんは、精力的に撮影されていました。日が昇ると同時くらいに活動を始めて、夜遅くまで撮影して、寝る前に必ず、その日に撮った映像を全部見返すんです。すごい熱量と作業量です。
ある朝、4時に起きて、ヤギのミルクでチーズを作っている牧場を訪ねました。ヤギ小屋が標高の高い山のほうにあり、早朝に出発したこともあって、ワイズマンさんは途中で具合が悪くなって座り込んでしまったんです。この映画はもう終わりかな、とヒヤッとしましたが、しばらく休むと回復されて、その場でまたカメラを回し始めました。
――ミッシェルさん自身はレストランの仕事の中で、いちばん面白くて夢中になれるのはどんなときですか?
一言で言えば全部です。新しい料理を考える、お客さんと話す、ワインの知識をソムリエから得る、料理人を指導する、スタッフと話し合う。これらすべての瞬間が私は大好きで、日常は楽しいことに埋もれていると言ってもいい。
とはいえ、やはり新しい料理を創作しているときが、いちばん情熱を感じる面白い時間かもしれません。頭を使って一生懸命に考えないといけないので、エネルギーが必要で、非常に凝縮された時間です。
その料理がどういうものになるのか、自分がどこへ向かって何をしようとしているのか、どうすれば考えがまとまって形になるのかもわからないまま、しゃべったり、味わったりしているんです。
撮影されていることを忘れることも
――映画の中でいうと、牛の腎臓の料理を試食して、周りの人たちと話している場面ですね。
自分でもわからない不確実なものを形にしていくときの産みの苦しみ、そして周りにいる人たちに思いや考えを伝える難しさ、もどかしさが、あのシーンにはにじみ出ていると思います。
あまりにも料理に集中していたから、実は撮影されていることを知らなかったんですよ。撮影すると言われていたとは思うんですけど、完全に忘れていました。
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