BOPビジネスの正しい進め方《第4回・最終回》--現地社会の「起業家」を発掘・支援することが重要

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 ドリシュティ社は、村で起業家を発掘し、彼らが複数の企業から商品を車に乗せてリテールポイント(小売店)に配達するという物流を作った。さらに、村の商店からではなく「ディストリビューター(販売代理店)から手数料をもらう」というビジネスモデルを確立。商店では携帯やインターネットで発注すれば、欲しい商品が届けられるようになり、品ぞろえも充実した。その結果、仕入れで店を閉める必要がなくなった。

同社は、コミュニティミーティングや村の教員などを通じて適任者を推薦してもらい、起業家として参画してくれる人材を発掘。この起業家たちはITトレーニングに加え、簡単な医療トレーニングも受けている。これは通常は週1回である医師の村の巡回の間に、応急的な処置ができるようにするためだ。

ドリシュティ社はBOP層をビジネスモデルに巻き込み、貧困、利便性、医療などさまざまな地域の課題を解決しながら、2000年の創業以来、大きく成長している。

さて、これまでの連載で見てきたように、BOP市場は非常に大きな潜在力を秘めた市場であることは間違いない。しかし、貧困問題や衛生問題などの社会的課題は大きく根深い。実際にはBOP市場での失敗事例もたくさん生まれている。

失敗事例に共通しているのが、社会課題の解決に直接的に役立っていないということだ。安全な水の供給が不足している、道路が通れない、子どもが学校に通えない、など先進国の視点だけでは想像すらできない社会課題に直面しているのがBOP市場である。

BOP層を巻き込むには、こうした当たり前のことをできるようにする、という現実的でプリミティブな社会課題を解決するビジネスモデルを作ることが重要である。これまでご紹介してきたように他の先進国企業はすでにこうしたビジネスモデルをいくつも生み出し、大きな貢献をしている。同じ先進国の日本企業も同様のことができるはずだ。まずは各企業が第一歩を踏み出すことを期待したい。

あかばね・まきこ
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 CSR Asia日本代表。さまざまな業種の多国籍企業でCSR担当として10年以上の経験を持つ。スターバックスコーヒージャパン、セールスフォース・ドットコム、日興アセットマネジメントの各社で関連部署の立ち上げを手がける。2002年にはスターバックスコーヒージャパンの社長賞受賞、06年には社員ボランティアの仕組みが評価され、セールスフォース・ドットコムをさわやか福祉財団の「ナイスサポート賞」受賞に導く。いずれの受賞も企業のCSRプログラムを本業とうまく統合させていくことが評価されたもの。セールスフォース・ドットコムではシンガポール支社でのCSR部署の立ち上げを経験。他にも日本以外ではタイ、韓国、中国でのCSRプロジェクト実施の実績がある。早稲田大学で政治学と生物学を修め、カリフォルニア大学リバーサイド校、タフツ大学、慶應義塾の各大学院で学ぶ。清泉女子学院大学、立教大学、慶應義塾大学、APABIS、ブリティッシュ・カウンシルをはじめ講演多数。
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