ボンディングワイヤのデパートになる--田中電子工業社長 笠原康志
田中貴金属グループは、電球のフィラメントに使われていた白金を回収するところから、工業製品をスタートした。
貴金属は高価なので、会社の方針として無駄なく使うことが基本だ。お客さんの側にも、なるべく使用量を減らしたい、薄く、細く、小さくしたいという要望がある。その加工の方法、また循環リサイクルの構築についても、つねに頭に入れている。
田中電子工業が手掛けるボンディングワイヤは、半導体と表裏一体の歴史を歩んできた。軽薄短小、高密度化、高機能化する半導体の進化に、細く長く真っすぐなワイヤが必要とされてきた。それを実現できるのがわが社の技術のキーポイントだ。
われわれがつねに考えているのは、ボンディングワイヤのデパートになるということだ。今も金製ワイヤだけで約40種類をそろえている。種類を豊富に持つとコスト増にもつながる。そこで、製造のスピードを上げる、不良品を作らないなど低コスト化のノウハウを積み上げて対応している。
新しい柱を作り続ける
金だけでなく、銅、銀とワイヤのラインナップも増やしている。次から次へと、新しい柱をつねに作り続けることが、市場シェアを維持する戦略だと考えている。
銅へのシフトについては、5年くらい前から本格的に考え出した。それまでは価格が上がってから対応しようとして、手遅れになった。ただ今回は、金線の技術メンバーを半分くらいにして、残りを銅に移すなど、機軸を大きく変えた。