中国が狙う日の丸ハイテク磁石、標的はエコカー心臓部
自動車や電機など「日の丸」製品の競争力低下が懸念されている現在、日本企業が先端技術を有するハイテク素材への期待は高い。その代表例がネオジム磁石だ。従来型のフェライト磁石に比べて10倍以上の磁力を持ち、高温下でも性能が落ちない。自動車や電機製品の小型・軽量化の切り札といえる。
特にハイブリッド車や電気自動車の心臓部に当たる駆動用モーターや省エネ型家電など向けに、将来の需要拡大は確実だ。そのネオジム磁石の耐熱性を支えるのがジスプロだ。
今年半ば以降、中国政府は自国内のレアアース採掘枠規制の運用を厳格化。これによって、ジスプロの産地が集中する中国南部の採掘量に大きな影響が出始めている。
主産地である江西省、福建省、広東省のレアアース採掘枠は合計で年1・3万トン。これまでは採掘枠が順守されず、年間3万トン以上の採掘が行われていたという。今後、採掘枠が厳格に適用されれば、ジスプロの供給が半分以下に細りかねない。
中国から日本に輸入されるジスプロは年間500トン程度。日本でネオジム磁石を造っているのは日立金属、信越化学工業、TDKの3社で、この3社が日本のジスプロ需要のほとんどを占めている。
500トンを買うのに2年前は総額数十億円で済んだ。が、現在は1000億円超と実に20倍にも膨らんでいる。今後供給が細れば一段高となりかねない。
すでに中国内でも複数の企業が電動自転車やおもちゃ用にネオジム磁石を製造している。その生産量は今後も伸び続けるとみられ、中国内でのジスプロ需要も増える。
豊田通商の山岸直人・金属資源部長は、「14年ごろには中国も重希土の輸入国に転じる可能性がある。遅くとも15年までには重希土の新たな調達先を確保する必要がある」と焦燥感を隠せない。