もうすぐGDP世界3位になる「大国インド」の実情 ヒンドゥー・ナショナリズムが台頭する背景

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パキスタンはイスラームを奉じるイスラーム国家です。しかし、インド共和国はヒンドゥー国家ではありません。確かにインド共和国の民衆の8割近くがヒンドゥー教徒です。でもインド共和国はどの宗教も特別扱いをしないセキュラー国家なのです。

セキュラー国家という言葉は耳慣れないかもしれませんが、日本もアメリカもヨーロッパもほぼすべての国がそうなので意識していないだけで、どの宗教にも特定の地位を与えない、つまり、政教分離の原則がとられている国のことを指します。

宗教対立をなるべく避ける国家運営

実際にインド共和国には1割強のイスラーム教徒が住んでいます。ほかにもシク教やジャイナ教といった信仰を持つ人たちもいます。インド共和国はこうした宗教対立をなるべく避ける国家運営をしてきました。

もっといえば、インドでは現在もカースト制度が残存していてカーストによる対立があり、加えて公用語も20近くあります。それゆえ言語による対立もあり、インドはヒンドゥー教徒が多いといってもその内部に対立を抱えており、ヒンドゥー教でひとまとめにできない多様性があります。したがって、パキスタン=イスラームvs.インド=ヒンドゥー教といった対立図式はあまりにも表面的な見方にすぎないことを強調しておきます。

「宗教の違いによる対立」もないわけではありませんが、もっと解像度を上げる必要があります。同じ宗教の信徒であっても、熱心な信徒もいれば、親が信徒だったからなんだよね、という人もいるなど、濃淡があるわけです。こうしたことを無視して宗教対立と一言で片づけるのは思考停止だと思っています。

インドとパキスタンの対立はセキュラー国家と宗教国家の対立であって、言い換えれば国民統合の理念をめぐる対立なのです。宗教による対立ではなく、宗教を使って国民をまとめあげようとするパキスタンと、宗教によらず国をまとめあげようとするインドの対立というわけです。

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