赤字転落のエルピーダメモリ、迫る巨額返済の重圧
日本で唯一のDRAMメーカーで、世界3位のエルピーダメモリが強烈な逆風に見舞われている。10月下旬に発表した2011年4~9月期決算は、567億円もの最終赤字に沈んだ。
理由は、価格の急落だ。DRAMはパソコンなどに使われる記憶用半導体。世界経済の減速やスマートフォン、タブレット端末の人気に押され、パソコンの需要が低迷していることから、スポット価格は1個当たり1ドルを割り込む水準にまで低下している。
採算レベルは1ドル台半ばとされ、完全な原価割れだ。そこに、歴史的な円高が追い打ちをかけている。
「最先端の技術を使っているのに、(コンビニで売っている)おにぎり半分の値段にしかならない」。決算説明会の冒頭、坂本幸雄社長はこんな愚痴をこぼした。
サムスン以外は赤字
同じ記憶用半導体でも、韓国のサムスン電子や東芝が手掛けるNANDフラッシュメモリは、価格低下に伴ってスマホやタブレット端末など最終製品の裾野が拡大。底堅い収益が維持できている。
DRAMでもスマホなどに使われる製品は付加価値が高い。エルピーダは「プレミアDRAM」と呼ぶモバイル機器向けの製品にシフトすることで生き残る戦略を進めてきた。ただ同製品は当初想定したほど伸びておらず、ぎりぎり黒字を確保できるかといったところ。パソコンの不振による収益悪化を補える規模には育っていない。