福島原発訴訟、国・東電の賠償額はどうなるか 原告は1万人規模へ拡大
約4000人が参加する「生業を返せ、地域を返せ訴訟」(13年3月福島地裁に提訴)。東電の過失責任と安全規制を怠った国の監督責任を指摘し、放射線量を事故前の水準に戻す原状回復、できない場合は1人月5万円の賠償を求めている。
原告団の狙いは「原子力損害賠償法」にもとづく賠償スキーム見直しだ。同法では「被害者保護」と「原子力事業の健全な発達」を目的としており、事業者の「過失責任」の有無は問われない。
同原告団は東電と国に対し、それぞれ民法709条(不法行為による損害賠償)などと国家賠償法1条(国の故意・過失による損害賠償)に基づいて責任を追及している。公害問題に詳しい除本理史・大阪市立大学教授は、国や東電の過失を司法が認定した場合、原賠法のもとで決まる損害賠償額よりも「大幅かどうかわからないが、増える可能性はある」と述べた。
同訴訟の代理人を務める馬奈木厳太郎弁護士によると、福島地裁は「過失の存否は重大な争点」との見解を示した。被告の国も東電も、過失はなかったと主張している。
津波の想定めぐり新資料
東電旧経営陣らの責任を追及する株主代表訴訟(原告42人、12年3月東京地裁に提訴)で、東電側は裁判所の要請に基づき、2008年9月に同原発の小森明生所長(当時)らが出席した社内会議の資料を提出した。
同資料には「津波対策は不可避」との記載があり、事故前から同社内で津波の危険が認識されていたことを示唆。大津波の襲来を「想定できなかった」としてきた東電の説明と異なる内容と原告側は主張している。
東電側は、同地裁に提出した準備書面で「津波が現実的に襲来する危険性が存在することを意味するものではない」と反論。しかし、訴訟代理人の河合弘之弁護士は「津波対策の必要性を東電が認識していた何よりの証拠。裁判に重要な影響を与える」と指摘している。
一方、東京第5検察審査会は7月17日に勝俣元会長ら3人を業務上過失致死傷の罪で強制起訴すべきと議決。同検察審は14年7月にも「起訴相当」と判断したが、東京地検は今年1月、「事故の予見可能性、結果回避可能性及びこれらに基づく注意義務は認められない」として不起訴とした。しかし、同審査による起訴すべきとの判断は2回目で、勝俣氏らは強制起訴される。31日公表の議決文は大津波の発生に「具体的な予見可能性があった」などの判断を示した。
(浜田健太郎 編集:北松克朗)
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