証券市況の低迷長期化で野村HLDの12年3月期、13年3月期東経予想を減額、不採算の欧州リストラ断行で背水の陣

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さらに、ホールセール部門において利益下支え要因となるのが、今回発表された年間12億ドルのコスト削減策である。1Q決算時に発表された4億ドルのコスト削減計画を大幅に積み増した。4億ドルの削減策は、欧州中心に海外で約380人の人員削減が柱だったが、今回追加する8億ドルの削減については、「欧州が全体の6割くらい、人件費が全体の7割近く」(中川順子CFO)という。前回同様、欧州での人員削減が中心と見られ、海外での人員削減はトータルで1000人を超す可能性がある。

「09年時点の収益環境を前提とした費用構造を、11年時点の収益環境を前提とした費用構造に改め、損益分岐点を下げる」と柴田COOは説明する。「4億ドルの削減策の進捗率は6割くらいだが、今回の削減策の大部分は今期中に終えたい」とも言う。

会社側が目指すコスト削減が実現すれば、今下期から効果が見込める。ただ、今下期だけでは200億~300億円程度だろう。来期には通期で600億~800億円の費用圧縮が可能となろう。

人員削減は業務成績の劣る人材が対象となるが、それでもトップライン縮小という悪影響も想定される。特に欧州は現在約4500人の人員の1~2割が削減されると見られ、現場の士気や求心力への影響も懸念される。損益分岐点を下げても、トップラインも同じだけ落ちてしまっては、赤字は減らない。そのため、コスト削減効果も慎重に見ておく必要がある。

「その他」の部門では、今期から完全子会社化で連結対象となった野村土地建物がトップラインの増大に貢献する。ただ、利益面では1Qに計上した「負ののれん代」など一時的利益243億円以外に目立った貢献は見込めない。

これらを総合的に勘案し、東洋経済では12年3月期通期の税前利益を500億円と予想する。上期は営業部門が327億円、アセット・マネジメント部門が122億円、ホールセール部門が880億円の赤字、その他が328億円で計103億円の税前損失だった。下期の税前利益については、営業部門が240億円、アセット・マネジメント部門が110億円、ホールセール部門がコスト削減効果やすかいらーくの譲渡益を含めて250億円、その他が収支トントンで計600億円の黒字と予想する。

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