過去に戻るつもりはない、新しいワンバンクを作る--みずほフィナンシャルグループ社長、グループCEO 佐藤康博
グループCEOを据えて持ち株会社の機能を強化し、証券、信託銀行が100%子会社として並ぶことは、お客さんにどんなメリットがあり、何がよくなるのか。そういった視点がなければ、口先だけの「顧客第一主義」になる。個人や中堅・中小、大企業のお客さんにどのようなメリットがあるのかを、11月の発表ではきちんと説明していく。
欧州危機は長期化も 出資や買収には慎重
--昨今の金融業界では、長期資金を調達してさまざまな形で与信を行うという、いわば旧興銀のような機能が強く求められているのではないでしょうか。
私が旧興銀出身でもあるので、非常に気をつけて話さないといけないが、今ほど産業金融という長期の視点が必要なときはないと思う。たとえば、超円高で日本の産業が大きく変わろうとしている。もう一つは被災地やアジアのインフラ構築だ。短期的な視野で儲かるかどうかでやると、誰もついてこない。だが、中期的に地域や国の復興や成長を見据え、金融機関がそこから果実を得るととらえれば、産業金融のジャンルが非常に重要になる。
シンジケートローンのアップフロントフィー(手数料)で収益を上げることもあるが、それだけを金融の役割とするのは大きな間違いだと思っている。みずほでは東北でファンドを創設したり、県と一緒になって風力発電所をつくろうとしている。金融の役割が何なのかを今回の震災で問われたし、アジアでも問われている。そこにはしっかりと応えていきたい。
──金融力を発揮するには経営の手腕が問われます。
持ち株会社で設定した今年度下期の営業方針には、CBの強みとして、「産業に知見を持って、産業と一緒に歩く」とはっきり書いてある。こうした言葉の使い方にはそうとうためらったが、「また興銀みたいなことを言って」という声は出ていない。なぜなら、産業と非常に密接した銀行として10年間やってきたから。過去の銀行がどうだったかではなく、正しいことを言っているという確信をみんなが持っており、足の引っ張り合いはない。であるからこそ、私自身、不用意な言葉の使い方はしないと肝に銘じている。