福岡発の「草刈機まさお」が売れに売れる背景 義理人情の「ユニーク戦略」で54カ国に進出

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現社長の良光さんは、3代目。もともと会社の後を継ぐ気はなかったという。

「親父は赤いジャケットがトレードマークで、地元の田舎では知られた会社。僕が子どもの頃にコンビニで買い食いしただけで、誰かが厳格なうちの親に言いつけて、こっぴどく叱られたり……何かと肩身の狭い思いをしました」と打ち明ける。

逃げるように東京の大学に進学し、卒業後はしばらくフラフラしていたが、縁のあったホームセンターで働き始めた。「肥料を農家に配達すると、キャニコムの製品が現場で愛用されていて、ちょっとだけ誇らしくなりました」

2年後のある日、父親から良光さんにかかってきた電話が転機となる。「『今の給料より月3万円高く払うから、うちに帰ってこんか』と。つい、お金につられて帰ることにしました」。

2004年、24歳でキャニコムに入社。しかし、突然やってきた後継ぎ候補は社内に居場所を見つけられず、つらくてひとり泣いた日も……。

海外売り上げは50%を超えた

数カ月後、良光さんは「アメリカで本格展開」というミッションを受け、単身渡米した。「とにかく現場に飛び込み、アメリカの現場を見て話を聞いて、ニーズをつかもうと毎日必死でした」。

アメリカでもキャニコム流を貫き、ボヤキをもとに製品を改良すると、少しずつ売れるように。北米事業を軌道に乗せ、2010年に帰国した。ボヤキズムは海外でも通用したのだ。

草刈り機まさお 筑水キャニコム
若かりし頃の良光さん(左から2番目)とアメリカのスタッフ。「アメリカで苦労して最初の1台が売れた瞬間を思い出すと、今でもジーンときます」(写真:筑水キャニコム提供)

良光さんは2015年に社長に就任すると、「高付加価値化」と「グローバル」を打ち出した。

「前体制では、大量生産で安い製品を出していく戦略を描いていましたが、それでは本来のキャニコムらしさが失われて疲弊してしまう……。自分たちの力を信じて従来の高付加価値路線に戻し、グローバルにも改めて力を入れることにしました」

結果として、社長就任時に49億円まで落ち込んでいた売上高は右肩上がりで、2023年に100億円を突破。良光さんが入社時は全体の5%ほどだった海外の売り上げは50%を超えた。

アメリカを皮切りに韓国と中国、カナダ、タイに子会社を置き、近年は特にアメリカとオセアニア、アジアが好調だという。

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