福岡発の「草刈機まさお」が売れに売れる背景 義理人情の「ユニーク戦略」で54カ国に進出
農業の機械化に伴い、父の均さんは草刈機や運搬車の事業にピボット。そして2001年に発売した業界初の乗用四輪駆動「草刈機まさお」がヒットして、同社は一躍有名に。
「会長が子どもの頃、家のまわりの草刈りをしていて、ゴーカートで草刈りできればいいなと思った構想をカタチにしたんです」(良光さん)。
競合もひしめく中で、同社製品が選ばれるのは、もちろん特徴的な名前だけではない。「お客様のためのものづくり」を徹底し、顧客のニーズに合っているからこそ。顧客に潜む心の声を拾うために、同社では「ボヤキズム」と呼ぶ独特な戦略を掲げる。
「営業担当はもちろん経営陣や開発チームもみんな、顧客がうちの製品を使っている現場に出かけて、リアルな声に耳を傾けてきました。使い心地を聞いてみると、お客さんが最後にボソッとつぶやくんです。『もう1回切り返さなきゃいけないんだよね』とか『あとちょっとここが大きかったらいいのに』とか。そのボヤキこそ真のニーズであり、その言葉を逃さずキャッチして、次の製品開発のヒントにしてきました」
人に合わせて細やかにカスタマイズ
現場や人に合わせて、細やかにカスタマイズするのもキャニコムならではのスタイルだ。
例えば、背が高い欧米ユーザー向けにハンドルを10cm高くしたり、農園が広大なアメリカでは膝を痛めやすいと聞けば、ペダルを踏まずに手で操作できるシフトレバーにしたり。
「お客さんごとの要望に応えるうちに、同じ製品でもちょっと違う種類がどんどん増えました。例を挙げると、しいたけ原木の運搬車、静岡の三ヶ日みかん専用の運搬車もある。公道で走れる運搬車を、離島で使う消防車にカスタムしたこともあります。たとえ数台でも頼まれるのはありがたくて、うれしいですから」
たった1人のお客さんのために、心から喜ばれる製品をお届けする。これぞまさに「義理と人情」のものづくりといえる。
そして、技術力の高さも支持される理由の1つ。例えば、世界でいちばん遅く走る運搬車はキャニコム製だ。
「エンストせずに時速0.25kmで進むためには、高度な技術が必要です。社内に開発チームがあり、高専を卒業したばかりの若手から60代の社員まで集まって、ワイワイガヤガヤと知恵を絞り技術を磨いています。どんなニーズでも面白がって、真摯に応えてくれる社員がいるからこそ、こだわったものづくりを続けられるのです」
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