大活躍「ロバート秋山」なぜ「天才」と呼ばれるのか 令和の正統派「万能」コメディアンの魅力とは

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また同じなりきり芸人の代表格である友近などとのコラボでは、アドリブ力が全面的に解き放たれる。

2人のコラボで有名なのは町内会ネタ。秋山と友近がそれぞれ町内会の会長と副会長に扮し、お祭りの運営や自転車置き場のことなど小さなことで自分がマウントを取ろうとして延々と小競り合いを続ける。笑いながらも、よくぞここまで即興でやり取りが続けられるものだと感心してしまう。

こう見てくると、ロバート秋山は、基本スペックが抜群に高い正統派コメディアンの流れを汲む芸人なのがよくわかる。実際はそうではないが、まるで浅草の舞台で鍛えられた芸人であるかのような印象もある。

そんな正統派がマニアックな存在に思えてしまうのは、いまのテレビでは漫才がバックグラウンドにある人気芸人が主流を占めているからということもあるだろう。

その意味でも秋山は貴重な存在であり、最近の際立った活躍は、もしかすると笑い全般の流れがちょっと変わりつつあるひとつの兆しなのかもしれない。

ロバート秋山の芸は「現代アート」

先日放送された『新美の巨人たち』(テレビ東京系)も興味深かった。秋山がポップアーティストとして世界的に有名な村上隆の展覧会を訪れるという内容である。

出演のきっかけは、前から見た目が村上にそっくりと言われていたこと。その流れでこの日は秋山が「村上隆」になりきり、いかにもそれっぽい扮装で出演。するとサプライズで村上隆本人が登場。前から「クリエイターズ・ファイル」のファンだったという村上が秋山に会って逆に興奮ぎみなのがちょっと面白かった。

村上隆とロバート秋山
ロバート秋山の芸は「現代アート」に通じるところも(出所:テレビ東京系列『新美の巨人たち』X公式アカウント@binokyojintachi

そう言われれば、秋山の芸にはポップかつシュールな点など現代アートに通じるところがある。そしてそのベースには、他の追随を許さないひらめきと、それを即座にかたちにするずば抜けた表現力がある。そんな秋山を「天才」と呼びたくなるのは、自然なことだろう。

【写真】ロバート秋山の多彩ぶりがわかる写真の数々(7枚)
太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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