一流の開発トップは「話を聞く」を徹底する 「Elasticsearch」生みの親の開発哲学
――Elasticsearchはどこから着想を得て開発したのですか?また、それを会社化することにしたのはなぜでしょうか?
Compassは1台のサーバで完結する世界であって、あるプロジェクトで使われ、終わると使われなくなるという類のものでした。
しかし、世の中で扱われるデータ量は日に日に増え、クラウド技術も進展した。そうした環境の変化もあり、もっと良い検索エンジンが作れるばずという思いを強くしていったんです。
Compassでの経験があったから、成功するにはかなりの努力と投資を要することは分かっていましたし、多くの人が自分の提案を受け入れてくれるだろうという自信もありました。それで、勤めていた会社を辞め、100%このプロジェクトにコミットすることにしたんです。
幸いにもヨーロッパやシリコンバレーのスタートアップの人たちなどが使ってくれたため、次第に24時間365日来る問い合わせに対応しなければならなくなりました。このタイミングでしっかり対応しなければMiss outするという思いがあり、会社化するという決断に至りました。
――エンジニアの中には、ビジネスをめんどくさいものと思い、できればプログラミングに専念したいと考える人もいます。Shayさんはどうでしたか?
人生のタイミングにより考え方は変わったというのが、質問に対する答えです。
妻がシェフになるのをサポートしていたころは、私は銀行でプログラマーをやっていましたが、彼女の決断をサポートすることが最優先の事項でした。
しかしその後、良いビジネスアイデアが見つかったため、起業してもいいだろうと考えるようになりました。
コードを書くことも大事ですが、会社をどうやって起業するかなど、ビジネスサイドのことを考えるのも、同様に大事だというのが私の考えです。
ユーザーの声に耳を傾ければ自ずと解は見えてくる
――世界中に多くのリモートワーカーを抱える会社のCTOとして、働き方に関するこだわりや流儀はありますか?
リーダーは、マーケティングやビジネス戦略など、エンジニア以外の視点も持つ必要があると思います。でなければ、「なぜ自分たちはそれをやっているのか」というストーリーを語ることができないからです。
そういうストーリーが社員のモチベーションを生み、彼らをイノベーティブにさせるのだと思っています。
また、こちらから社員に伝えるのは、重要ないくつかのことだけです。後はそれぞれに任せるようにしています。社員1人1人が真剣に考えるからこそ、OSSのパワーは発揮されると考えているからです。
オープンソースのプロジェクトの強みは、プロダクトの背後に多くのユーザーがいることです。一般の会社であればロードマップが必要ですが、オープンソースでは、彼らの声に耳を傾けさえすれば解は出てきます。
グッドリスナーでありさえすれば良いのです。