「高校浪人」挫折した彼が"世界王者になった"ワケ ベンチプレスで世界一になった彼の波乱な半生

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こうして必死に勉強をした山下さんは筆記試験になんとか合格し、面接でも「あまり悪い感じの子じゃないですね」と言われたそうで、無事、金光藤蔭高校に入学することができました。

周囲より1歳年上の状態で、高校に入学した山下さん。最初のほうこそ年上のクラスメイトに戸惑った同級生たちは敬語を使っていたようですが、しばらくすると普通に同級生として馴染むことができ、楽しい高校生活を過ごせたそうです。

そんな山下さんに浪人してよかったことについて聞くと、「頑張ればなんとかなると思えたこと」と答えてくれました。

「退学するまでの自分は、勉強が全然できませんでした。でも、浪人の期間に本気を出したら人並みにはできるようになることがわかって、その後の人生でも、苦手なことでも頑張れば、ある程度のところまではいけると思えるようになったことが大きかったです。この2カ月で生活を立て直し、人生を変えることができたのが、自信になりました

人生を決定づける運命の競技と出会う

この高校で、彼はのちの人生を決定づける運命の競技とも出会います。それが、のちの山下さんのライフワークとなる、パワーリフティングでした。

「金光藤蔭に入ってから、親に『目標がないと学校に行かなくなる性格だから、1年遅れていても、できる部活を探しなさい』と言われたんです。最初は柔道部に入りたかったのですが、推薦入学の生徒しか受け付けていなかったので、見学すらできませんでした。

どうしようかな、と思っていたとき、パワーリフティングをやっていた先輩に『君、いま暇してるの?』と声をかけていただいたんです。見学に行ってやり始めたら、1年生の夏からいきなり全国大会に出られたので、競技にのめり込みました」

この競技にはまった山下さんは、「学校に行く意味ができた」と喜び、無我夢中で打ち込んだ結果、1年生の最後には世界大会出場の権利を獲得することができました。

それからの山下さんの戦績は輝かしいもので、高校2年生のときには18歳未満の世界大会で銅メダルを獲得。高校の全国大会では優勝3回、準優勝1回、MVP2回と目覚ましい実績を残しました。一方で、勉強のほうも一度退学し、浪人を経験したことから真剣に取り組むようになりました。

濱井正吾 浪人 世界男子ベンチプレス選手権 山下保樹
2022年に世界ベンチプレス選手権大会で優勝した山下保樹さん(写真:山下さん提供)
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