「高校浪人」挫折した彼が"世界王者になった"ワケ ベンチプレスで世界一になった彼の波乱な半生

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「当時の大阪は私立高校の無償化を進めていた時期でした。でも、僕は一回別の高校に行っているからお金を払わないといけなかったんです。

公立だったら年間15万円くらいで、私学なら年間70万〜80万かかると親に言われました。親が前期・後期のお金を払う際には現金を生で見せられて『今から授業料振り込んでくるから真面目に学校行きや』と言われたのも覚えています。

それでお金の大事さを認識しましたし、ちゃんと勉強せなあかんと反省しました。真面目に授業受けて宿題もちゃんとやっていたので全部のテストで90点以上を取り、留年せずに済みましたね」

スポーツで素晴らしい成績を残した山下さんのもとには、大学のお誘いも大量に来たそうですが、大学に行くつもりはなく、フォークリフトの資格を取って、就職に備えていました。

「無料で大学に行ける特待生も5校くらいいただいていたのですが、就職するつもりだったので全部断っていました。でも、高校3年生のころに親に『ここまで来たならどうしても大学行って、卒業してほしい』と言われたので、ジムでトレーニングを続けながら、先生に大学に行く方法を聞き、授業が終わってから1日3時間、ずっと勉強し続けました。勉強の甲斐もあり、阪南大学流通学部流通学科スポーツマネジメントコースに一般入試で合格し、入学しました」

大学で勉強が楽しいと感じた

阪南大学に入ってからの山下さんは、「インフルエンザになったとき以外は全部授業に出た」というほど勉強にものめり込みます。

「スポーツや生理学に関する勉強が、とても楽しかったです。実は高校時代、阪南大学には授業料免除でお誘いをいただいていたのに、一度辞退してしまいました。だから一般受験で入って年間100万円する授業料を親に払ってもらったのは本当に申し訳なかったです。

でも、そのおかげで1コマの授業にもお金がかかると思って、真剣に聞いていたため、たくさん学ぶことができました。知らないことを知れることができるのが、これほど楽しいことだとは思わなかったです。授業料を出して、大学に行かせてくれた家族には本当に感謝しています」

「ゼミの中で卒業論文をいちばん最初に書きあげた」と語るように勉強を楽しんでいた山下さん。一方でパワーリフティングのほうも、大学時代には全日本学生パワーリフティング選手権大会で優勝2回、準優勝2回、23歳以下の全国大会でも1回優勝するなど、競技実績を積み上げていきます。

濱井正吾 浪人 世界男子ベンチプレス選手権 山下保樹
2022年に世界ベンチプレス選手権大会で優勝した山下保樹さん(写真:山下さん提供)
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