オフィス賃料、「2017年ピーク説」は本当か 渋谷・新宿は堅調だが、港区・中央区には懸念

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賃料上昇トレンドは今後もしばらく続きそうだ。CBREは東京グレードAオフィスの賃料について、「2015年から2017年までの3年間で2割程度上昇する」と予想する。

だが、賃料アップが実現しているのは、立地やスペックに優れた物件に限られている。テナントを引き抜かれる立場の既存ビルの賃料は改定がなかなか進んでいない。

足元では過熱感が一部指摘されているものの、不動産ミニバブル期の水準まで賃料が短期間で駆け上がっていくことはなさそうだ。

2017年の消費税増税が鬼門

2017年後半以降については慎重な見方が多い。不動産仲介・三幸エステートの今関豊和チーフアナリストは、「2016年の新築ビル供給が多いこと、2017年4月の消費税再増税で景気が冷えることを考えると、2017年下期あたりが潮目となる」と分析する。

都心部でもエリアによって、空室率と賃料の動向に違いが出てきそうだ。今関氏は、「渋谷区はIT業界の旺盛なオフィス需要に対して供給が足りない。新宿区も開発余地が限られて供給不足」と、“西側”の需給が逼迫していることを指摘する。

一方、港区や中央区など“東側”に関しては、新築ビルの大量供給に伴い、すでに今年に入って空室率の上昇も見られる。判明している今後のオフィスビル竣工計画を概観しても、港、中央区に集中している。

さらに空室率が上昇していくことになれば、回復途上にあった賃料の反落は、東側から始まるかもしれない。

「週刊東洋経済」2015年8月1日号<7月27日発売>「価格を読む」を転載)

茨木 裕 東洋経済 記者

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いばらき ゆたか / Yutaka Ibaraki

1975年生まれ。「週刊東洋経済」編集部所属

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