話題作なく総崩れ?「夏ドラマ」評価分かれる背景 クドカン新作と日曜劇場は厳しい評価の一方…

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ほかにも、赤字経営の病院を美容クリニックに変えようとしていがみあう家族や、そんな病院に担ぎ込まれるホストやキャバ嬢、ホームレス、トー横キッズ、外国人難民などが物語に登場する。

そこで起きている出来事は、歌舞伎町の現実の一部かもしれない。だが街のことも、社会問題も、すでに数多く報道されているだけあって、既視感だらけに思えてしまう。社会問題として掘り下げてもいないため、ストーリーに意外性も新しさもない。事象の表面をなぞっているだけに感じてしまうのだ。

ヒロインであり、歌舞伎町の若者をサポートするNPO法人代表の南舞(橋本愛)が、夜はSMクラブの女王という裏の顔を持つのも、昔よく見たドラマ設定のパターンのようだ。

ただ、英語と岡山弁を巧みに扱うアメリカ国籍の元軍医ヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)と美容皮膚科医の高峰享(仲野太賀)は、クドカン脚本ならではの会話劇を楽しませ、ドラマを引き締めている。その際立ったキャラ立ちっぷりは、視聴者を強烈に物語に引き込んでおり、つい見入ってしまう魅力を放つ。

新宿野戦病院 宮藤官九郎
『新宿野戦病院』(写真:『新宿野戦病院』公式インスタグラムより引用)

前期放送されたクドカン脚本の『季節のない街』(テレビ東京・ディズニープラス)は、災害から12年を経てなお仮設住宅で暮らす人々が抱えるさまざまな事情と街のあり方を、痛みを伴う喜劇として痛切に描き出していた。

本作にも痛みを持つ人々が登場する。彼らの人生の喪失からの癒やしと再生を、歌舞伎町という街を通してどう掘り下げていくのか。クドカン節の効いた悲喜こもごもの喜劇への昇華が、中盤から後半にかけて見られるのか。これからの展開を期待している。

日曜劇場っぽくない「ブラックペアン シーズン2」

日曜劇場は潮目が変わってきているように感じる。重厚感のある安定したストーリーが売りの枠だが、前作『アンチヒーロー』の暗く複雑だった物語とは対照的に、今回の『プラックペアン シーズン2』には医療ドラマであるにもかかわらず、ストーリーの“軽さ”が節々からにじんでいるように感じる。

人の命がかかるオペをショーと呼び、その公開オペのために症状が重篤で稀有な症例の患者を探す。そして、主人公の天才外科医・天城雪彦(二宮和也)の施術を受けて命が助かるためには、全財産の半分を彼との賭博にかけて、勝たなければならない。

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